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ー崩落ー117
「運転変わんで……疲れてるやろしな」
「いいよ……今は俺が運転したい気分だからよ」
「あ、まぁ……そういう事ならな」
雄介はそう返事をすると、素直に助手席に腰を下ろす。
雄介がシートベルトを締めたのを確認すると、望は車を走らせ、駐車場の出口まで来て、いつもとは違う道へと出るのだ。
「おい……望! いつもと道違うじゃ……ないん?」
「今日はこっちでいいんだよ。でもさ、お前は今日遅くなってもいいのか?」
「え? あ、まぁ……構わへんで……今日はゆっくり休んでおったしな」
「歩夢の所に行ったのに、今日の休みゆっくり出来たのかよ。まぁ、そこはいいんだけどさ。とりあえず、お前の言葉を信じるよ。話は変わるんだけどさ、もしちゃんと歩夢に断ることができたら、俺のことデートに誘ってくれるって言ってたんだよな?んで、俺をどこに連れて行ってくれるつもりだったんだ? ブランド物のスーツまで着てきちゃってさぁ」
「んー、んーと……そんな先までの事考えてなかったっていうんかな? アイツに断る理由を考えるのが精一杯やったし。まぁ、そこら辺をドライブしてディナーでも行って、ま、その後はホテルなんかな?」
最後の方は望の顔色を伺いながら言う雄介。
「お前がそうしたいって言うんだったら、俺はそれで構わないんだけど」
望にしては珍しく、スッキリとした表情で答える。
「望がそれでええねんやったら、俺はそれで構わへんで……」
雄介も今の望の言葉に笑顔になると、しばらくの間、二人はドライブを続けるのだ。
そうは言っても、明日は仕事があるのだから遠くには行けない。ただ、都会にひしめくビルとビルの間を走り回るだけだ。
東京というのは明かりが多すぎて、自然の光を放つ星を見ることはできないのだが、人工的な光が幾億もの輝きを作り、星のように見える。
望と雄介は二人だけの楽しい時間を過ごし、
「……で、飯はどうするんだ?やっぱり焼肉にするのはダメだよな?お前がいい服着ちまってるし」
「そりゃな……ほんなら、前に行った事のある展望レストランにせぇへんか?初心に戻ってな」
「ああ、俺はそれでも構わないぜ」
そう決めると、二人は車を展望レストランがあるビルの方へと走らせる。
二人はデートらしいデートを楽しみ、ご飯を食べ終えると、
「な、望……ホンマに運転変わるって……」
「いいって言ってんだろ」
「ほな、望は運転しながらホテルに入る事出来るんか?」
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