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ー崩落ー116
そう言うのだ。それと同時に望も机から顔を上げて、スッキリしたような表情をすると、
「俺の方も終わり!」
「じゃあ、帰ろうぜー」
「ああ、そうだな……」
そう言いながら望は立ち上がり、体を伸ばす。
「あ! 忘れてたぜ……雄介の事……」
そう言って和也は、先ほど掃除をするために雄介のことを思い出したのか、雄介を呼びに行こうとしたが、望に後ろの襟を掴まれ、歩みを止められる。
「後は着替えるだけだし、後で声をかければいいだろ?」
「ま、そうだけどな……。なら、望が先に着替えて雄介の所に行ってやれよ」
そう言って和也は望の背中を押し、先に更衣室へと向かわせる。
望は先に着替えると部屋を出て、
「雄介……帰るぞ……。今日も歩いて来ただろ? 車で帰るか?」
やはり外では雄介に素直になれない望。
「ああ……おう! 車な……ああ、まぁ……一緒に帰るし……」
「車なんて一台あれば十分だろ?」 「どうしてや?」
雄介は今の望の言葉の意味が分かっていないようで、望が急に足を止めたため、その後ろを歩いていた雄介はつまづきそうになってしまう。
「そんな恥ずかしい質問するなよな」
と言ったものの、望は顔を赤くしながら再び歩き始める。
「二台あったら……別々に乗らなきゃならねぇし、寂しいじゃねぇか……」
「あ……」
その望の言葉にやっと気付いたのか、雄介は小さな声を上げる。
「せやな……。鈍感な俺でスマン。俺が和也みたいに頭がきれるような男やったら良かったのにな」
その雄介の言葉に望はため息をつき、
「馬鹿かお前は……俺はそんなこともひっくるめて、お前のことが好きなんだからよ」
最初の方はいつものトーンで話していた望だったが、最後の方は小さな声で言う。
そんな望の言葉に雄介は微笑み、望の後ろから肩へと腕を回すと、
「俺もやで……俺はどんな望でも好きなんやからな……」
雄介のその心の籠もった言葉に望は安心したのか、肩から力を抜き、
「分かってるよ……」
二人が話をしているうちに、駐車場へと着いた。そして望は運転席へと腰を下ろす。
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