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ー過去ー17
「じゃあ、和也は本宮さんにはっきりと別れるって言えるんですか?」
和也がそう断言してしまったのだから、話はまたそこに戻ってしまったのであろう。
「だから、そこは裕実の為なら、俺は実琴に言うって!」
「そんな過去を持っている本宮さんの前で、和也は本当にちゃんとハッキリと別れるって言えるんですか?」
さっきまでの勢いはどこに行ってしまったのだろうか。和也は再びその裕実の言葉で黙ってしまう。
「やっぱり、優しい和也にはそんな事言えないんでしょう? なら、僕と和也が別れた方が早いんですってば!」
「じゃあ、お前に聞くが……」
和也は裕実の肩に両手を添えると、真剣な瞳で裕実の事を見据え、
「お前は俺の事をどう思ってるんだ?」
和也は恋人同士での単純な質問だけを裕実へと聞いてみる。
「そりゃ! 当たり前じゃないですかー! 僕は和也の事が好きですよ。だけど、今の状況では一番簡単に問題を解決する事はそれしか無いと思っただけですからね」
「なら、いいんだけどさ……」
その裕実の言葉に和也の方は安心すると、
「とりあえず、俺は裕実とは別れないで、アイツが俺から離れる方法が今のところベストだと思ってるんだけどな」
そう言いながら和也は椅子へと座る。
「そんな奇跡に近い方法なんてあるのかよー」
「それじゃあ、前と一緒で自然消滅って方法しか無いような気がしますけど……。それじゃあ、僕達が正々堂々と本宮さんの前で付き合う事が出来ないんじゃないんですか?」
「んー……」
和也は今の裕実の言葉に頭を俯け、再び考え始める。
とその時、
「あー!!」
そういきなり大声を上げ頭を上げるのだ。
「分かった!」
「いきなり大声出すんじゃねぇよ……ビックリしたじゃねぇか……」
「ま、まぁ……分かったんだからいいんじゃねぇか……。あのさ、実琴の恋のキューピットやってやればいいんじゃねぇのか? 例えば男好きで今フリーな奴とくっつけてやればいいって事だろ? それで、俺じゃなく他の人を好きにさせればいいんじゃねぇのかな?」
「確かにそれなら平和な解決方法だな。それは別にいいんだけどさ……その相手は?」
「新城がいいんじゃねぇのかな? 望の弟でもいいけど、ちょっと歳が離れてるっていうのかな? それにあの性格についていけるとは思えねぇしな」
「まぁ、そこは本宮くんと新城と歩夢に決めさせたらいいんじゃねぇのかな? 歳の差なんか恋愛には関係ないだろうしな」
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