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ー過去ー16

「そこの所は分かってたさ……。そこは俺的には親友だって思ってたからな」 「でも、アイツの場合には、和也が軽い気持ちで言った『付き合ってみるか?』の言葉に乗ったってことは、完全に本気だってことは分かったんじゃねぇのか? だって普通、男にふざけてそんなこと言う奴はいねぇと思うんだけどよ。そんでもって、その言葉に『うん』とは頷かないだろ?」 「まぁ、確かにそうだけどさ。今はそこを言い合う場ではないだろ? とりあえずはアイツと平和に別れる方法を考えてくれるといいんだけど……」 「あ、ゴメン……。そうだったな」  和也のその一言で再び部屋内が静まり返ってしまう。  確かに和也の言う通りである。和也が専門学校時代に実琴と遊び半分で付き合っていたかどうかっていうのを議論している場合ではない訳で、今はその実琴とどう別れるか? っていう所を議論する所である。 「やっぱり無理だよな。やっぱさ、俺一人で考えた方が良かったのかもしれねぇな。アイツの事一番に分かってるって訳だしさ……」  和也はそう言うと、食べ終えた食器を流しへと運び、その食器を洗い始める。  恋愛経験があまりない望と裕実では、どうやら、そう簡単には何か意見が出てこないようだ。  でも少しでも今の和也の助けになりたいのは事実なのかもしれない。だが、そう簡単には答えは出てこないもんだ。  と、そんな時、急に立ち上がる裕実。 「分かりました! 和也と僕が別れればいいんじゃないんでしょうか? そしたら、和也はゆっくりと本宮さんと付き合うことが出来るんじゃないんですか?」  その裕実の意見に目を丸くする望と和也。  和也はその裕実の言葉の直後、キッチンからテーブルの所まで慌てた様子で走って来る。 「それは絶対にダメだ! 俺は絶対に裕実とは別れたくはねぇんだからなっ!」 「でも、実際には今はそれしかないんでしょう! なら、別れます!」 「嫌だ! 絶対にそれだけは嫌だ! 一番好きな奴と別れる位なら、無理してでも俺は実琴に別れを告げるからさっ!」

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