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ー過去ー15

「まぁ、望が話せって言ったんだけどな……」 「それにしたって……その過去の話をこんな風に打ち明けられるなんて、和也って凄いですよ!」 「あ、まぁ……」 「でも、コイツはな、一人で全部解決しようとしてたんだぜ。そんな複雑な問題を、一人で解決できると思ってるのか?」 「え? そうなんですか!? 和也は本当に一人で問題を抱え過ぎですよ。 そんなこと、一人で解決できると思ってるんですか?」  裕実の問いかけに、和也は答えに詰まる。彼が言い返せないのは、裕実の指摘が的を射ているからだろう。望に言われたのと同じことを、今度は裕実からも言われてしまったからだ。 「とにかく、和也としてはアイツとは穏便に別れて、正々堂々と裕実と付き合いたいってことだろ? でも、アイツには辛い過去があって、だから和也もはっきり『別れたい』とは言えないってことだろ?」 「ああ、そういうことだよ。アイツの話によると、物心つく前に両親を事故で亡くして、それからは施設で育てられたらしい。小学校から高校まで、誰にも心を開かず、ずっと孤独だったってさ。それで専門学校に入って俺と出会ったんだ。看護学校だったから、男子は少なくて、だから俺が最初に声をかけたってわけ。そっからアイツはよく俺の部屋に来るようになって、四六時中一緒にいるようになったんだよな」  和也は昔を思い出しながら、どこか懐かしげに話を続ける。 「そんで、若い時ってのもあって、俺も軽い気持ちで『付き合ってみるか?』なんて声かけたんだけど、どうやらアイツは本気だったみたいでな。毎日のように一緒に過ごしてたけど、俺にとっては友達以上、恋人未満みたいな感覚で……でもアイツには違ってたのかもな、って今になって思うよ」  和也の話に、裕実も望も静かに相槌を打っていた。 「確かに和也が本宮さんに別れを切り出せない理由、分かる気がします。もし僕が同じ立場だったら、やっぱり言い出すのは難しいですよね」 「ま、とりあえず、どういうふうにアイツに伝えるかってのが問題だよな」 「アイツはお前だけに心を開いたんだろ? お前だけに過去のことを話してくれたってことは、それだけ信頼してたってことだ。つまり、アイツにとってお前は特別だったってことだよ。お前、当時は気づいてなかったのか?」  望は、今の和也ならもっと察しがついたんじゃないかと言いたかったのだろう。

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