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ー過去ー14
和也が買い物カゴに食材を入れて会計を済ませると、三人は望の家へと向かった。
家に着くと、和也は望に言われた通りキッチンに立ち、料理を作り始める。その間、望と裕実はソファでのんびりと待っていた。
今日はただの気楽なお泊まり会ではない。そのため、いつもとは違う緊張感が部屋に漂っていた。普段よく話す和也がキッチンにいるせいか、会話もなく静まり返っている。
やがて、三十分ほどで和也が料理を運び終え、テーブルに準備を整える。
「飯、出来たから食おうぜ」
「うん……」
和也の呼びかけに応えて、裕実と望はテーブルに着き、三人で「いただきます」と手を合わせた。食事が始まり、ようやく和也が口を開く。
「裕実……さっき話そうとしたことだけどさ……。さっき会った本宮実琴って奴、覚えてるよな? 実はアイツ、俺が専門学校に通ってた頃の恋人だったんだ」
和也の話に裕実は少し驚いた様子だが、黙って続きを聞いている。
「俺が専門学校の頃、確かにアイツと付き合ってたんだけど、卒業後は別々の病院に就職して、それで忙しくなっちまって……自然消滅みたいになった。俺としては、もう過去の恋人って感じだったんだけど、今日、アイツが春坂病院で働くことになって、アイツが言うには『和也を追いかけてこの病院に来た』らしいんだ」
和也は困惑したように話を続けた。
「つまり、アイツはまだ俺に気持ちがあるってことになるよな。俺としては、もう終わったつもりだったけど、アイツにはまだ終わってなかったらしい。それで今朝、パニックになったんだよな。今は裕実が一番大事だけど……アイツの気持ちも考えると、いきなり別れ話を切り出すのも、なんか無理でさ」
和也の率直な告白に、裕実は一瞬驚きながらも、次第に和也が正直に打ち明けてくれたことを嬉しく思ったのか、ほっとしたように微笑んだ。
「和也らしいですね。ほんと、優しすぎるくらいですよ。でも、そんな事があったんですね。和也がモテるのはちょっと妬けるけど……ちゃんと話してくれてありがとうございます。隠されるより、こうして話してくれた方が僕も嬉しいですから」
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