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ー過去ー13

「ま、いいけどよ……。話するには、望の家が一番広いし、落ち着いて話せるからな。話がいつ終わるかもわからないし、一旦帰る時間なんかもなさそうだしな」  和也はそう言うと、裕実と一緒に望の車の後部座席へと座った。 「んじゃあ、とりあえず夕飯は和也な!」 「おいおい……まぁ、それはいいけどよ。冷蔵庫の中に何かあるのか?」 「多分な……。食べ物は雄介に任せてるから、中身まではわからないけど」 「なら、一応、スーパーに寄ってくれないか?」 「分かった……」  望はそのままスーパーへと向かった。  車内ではしばらく沈黙が続く。望も裕実も自分から話し始めるタイプではないので、和也が黙っていると、車内は自然と静かになるのだった。  やがてスーパーに到着し、三人は車を降りて店内へ入る。  男三人でスーパーにいる姿は、他の客から見ると少し奇妙に映るのかもしれない。気づくと、周囲の視線を浴びていることに気付いた。 「……なんだか、みんな僕たちを見てませんか?」  一番にその視線に気付いたのは裕実だった。 「そりゃあ、俺たちがイケメンだからじゃねえのか?」  和也が得意げに言うと、望はため息をつく。  しかし、周囲の会話をよく聞くと、どうやら和也の言葉も半分は当たっているらしい。 「あの人たちって、春坂病院の先生たちじゃない?」 「私、あの病院行ったことないけど、あんな素敵な先生方がいるの?」 「うん、しかも、男の先生と看護師さんばかりなんだよ」 「えー! 本当に? 一度くらい入院してみたいかも!」  周りの話を耳にしながら、望は少し複雑な気分になっていた。確かに評判は良いが、それがきっかけで入院患者が増えるのは困ると思いつつ、顔を俯けたままスーパー内を歩き始める。 「とりあえず、早く買い物を済ませて帰ろうぜ……」 「そうだな。評判がいいのはありがたいが、望や裕実はこういう視線には慣れてないだろうし、ここはさっさと買い物を終わらせた方が良さそうだな」

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