1279 / 1476
ー過去ー13
「ま、いいけどよ……。話するには、望の家が一番広いし、落ち着いて話せるからな。話がいつ終わるかもわからないし、一旦帰る時間なんかもなさそうだしな」
和也はそう言うと、裕実と一緒に望の車の後部座席へと座った。
「んじゃあ、とりあえず夕飯は和也な!」
「おいおい……まぁ、それはいいけどよ。冷蔵庫の中に何かあるのか?」
「多分な……。食べ物は雄介に任せてるから、中身まではわからないけど」
「なら、一応、スーパーに寄ってくれないか?」
「分かった……」
望はそのままスーパーへと向かった。
車内ではしばらく沈黙が続く。望も裕実も自分から話し始めるタイプではないので、和也が黙っていると、車内は自然と静かになるのだった。
やがてスーパーに到着し、三人は車を降りて店内へ入る。
男三人でスーパーにいる姿は、他の客から見ると少し奇妙に映るのかもしれない。気づくと、周囲の視線を浴びていることに気付いた。
「……なんだか、みんな僕たちを見てませんか?」
一番にその視線に気付いたのは裕実だった。
「そりゃあ、俺たちがイケメンだからじゃねえのか?」
和也が得意げに言うと、望はため息をつく。
しかし、周囲の会話をよく聞くと、どうやら和也の言葉も半分は当たっているらしい。
「あの人たちって、春坂病院の先生たちじゃない?」
「私、あの病院行ったことないけど、あんな素敵な先生方がいるの?」
「うん、しかも、男の先生と看護師さんばかりなんだよ」
「えー! 本当に? 一度くらい入院してみたいかも!」
周りの話を耳にしながら、望は少し複雑な気分になっていた。確かに評判は良いが、それがきっかけで入院患者が増えるのは困ると思いつつ、顔を俯けたままスーパー内を歩き始める。
「とりあえず、早く買い物を済ませて帰ろうぜ……」
「そうだな。評判がいいのはありがたいが、望や裕実はこういう視線には慣れてないだろうし、ここはさっさと買い物を終わらせた方が良さそうだな」
ともだちにシェアしよう!