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ー過去ー12
「そ、それは……前にも言ったことがあるじゃないですか! 僕みたいな男は女性とは釣り合わないって……」
最初は和也の目を見て真剣に話していた裕実だったが、途中から視線をそらし、俯きがちに話し始めた。
そんな裕実の様子に、和也が気付かないわけがない。
「確かに、前に聞いたけどさ……半分は本当で半分は嘘ってとこだろ? 今、俺から視線を外したってことは、そういうことなんだよな?」
和也の指摘があまりにも核心をついているため、裕実は何も言い返せず、再び膝をギュッと掴み俯いてしまう。
「女性と付き合ったことがなくて、いきなり男性と付き合うって、少しおかしくないか? 俺も望も、一度は女性と付き合ってみて『何か違う』って感じたから男性を選んだわけでさ、納得できる部分があったんだ」
黙って聞いていた裕実だったが、突然立ち上がり、
「どうして! 和也は人の心をえぐるようなことを平気で言うんですか!? 僕だって、言いたくない過去があるんですからね!」
裕実の大きな声に、望も和也も驚いたが、望の方は心の中で「裕実が怒るのも無理はない」と思っていたのかもしれない。実際、和也の無遠慮な言葉に怒ったことが何度もあったからだ。
一方、和也は一瞬、裕実の怒りに驚いたものの、
「分かったよ……。 お前がそのことを話したくないなら、俺はもう過去のことについて聞かない。けど、いつか話したくなったら、いつでも俺が聞いてやるからさ……。 俺はいつでもお前の味方だから、それだけは分かっておいてくれ」
そう言うと和也は裕実の腕を引き、そっと抱きしめる。
「とりあえず、今は先にお前に話さなきゃいけないことがある。それは、望の家に行ってから話すからな」
和也は裕実の頭を優しく撫で、切なそうな瞳で見つめる。
そんな和也の様子に、裕実は首をかしげるだけだった。
「じゃあ、望は先に着替えてこいよ」
「あ、ああ……」
望が着替えを終えると、三人は駐車場へと向かった。
「どうせ泊まるんだろ? なら、俺の車で行った方がいいんじゃないか?」
「そうだな……って、望、別に俺たちは望の家に泊まるつもりはなかったけどな」
和也の言葉に、望は顔を真っ赤に染める。
「あ、いや……それは……いつも泊まってる気がしてさ……だ、だから……そう言っただけで……」
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