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ー過去ー11
「裕実、いつからここにいたんだ?」
「さっき、本宮さんとすれ違いに入って来た時からですよ」
「……ってことは、今までの話、全部聞いてたってことになるのか?」
「え? あ、まぁ……。 だって、和也に声をかけたのですが聞こえてなかったみたいなので……とりあえず終わるまで待ってようと思っていたんです」
「そっか……」
「まぁ、話は聞いてましたが、お二人が話されていたこと、僕からしたらサッパリでしたけどね」
「まぁ、そうだろうな。 訳は後で話すよ」
そう言うと和也は更衣室の方へと向かった。
その間、望はソファに座り、今疑問に思っていることを裕実に尋ねる。
「裕実って、兄弟とかいるのか?」
突然の質問に、一瞬目を丸くした裕実だったが、すぐに普通の表情に戻し、
「いませんよ。 その質問って、さっき会った本宮さんと関係がありそうですよね?」
「まぁな……。 さっきも俺たち、間違えそうになったくらい似てたからな。だから、兄弟かもって思ったんだけど……。 でも二人揃って兄弟じゃないって否定してるし。しかも苗字まで同じだろ? 不思議だよな」
「確かに、僕も一瞬、本宮さんを見た時に驚きましたよ。 こんなに似ているのか? ってね。 でも、本当に僕は一人っ子で育ったので、絶対に違うと思いますけどね」
「そっか……」
望が裕実に顔を向けると、裕実はなぜか顔を俯かせて膝をギュッと握っているのが目に入る。
「ん? どうしたんだ、裕実……?」
「あ、いや……何でもないんですよ!」
裕実は明るく答えたが、望から見ると無理に笑っているようにしか見えなかった。
そこへ着替え終えた和也が戻って来て、
「今の話聞いてたんだけどさ。 裕実、今は一人暮らしだよな? 家族はどこにいるんだ?」
和也は裕実の横に腰を下ろし、少し空気を読まずに質問を続けた。
「か、家族の方はですね……田舎の方に住んでますよ。 今も元気にしてますから」
「そうなんだ……。 じゃあ、東京で一人暮らしをするきっかけは?」
「そりゃ、看護師になるために決まってるじゃないですかー」
「まぁ、そうだよな。俺も同じだし。 ま、それはいいとして……男を好きになったきっかけは?」
和也は腕を組み、真剣な眼差しで裕実を見つめながら質問をした。
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