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ー過去ー45
そして雄介はゆっくりと望の唇から離れると、
「ほな、風呂に入ろうか?」
その雄介の言葉に望は何かくすぐったそうな笑みを浮かべて、
「そうだな……」
と答える。
「そういや、望……明日仕事あるんやっけな?」
「ああ。 だけど、そういうお前だって明日は仕事あるんだろ?」
「ああ、そりゃな……。 俺は別に平気やねんけど……やっぱ、俺は望の体が心配なんやって……」
雄介は前を歩く望の後ろから抱き締める。
「ほなら、今日は辞めておいて……二人が休みの時にゆっくりと地下室でっていうのはどうや? たまには思いっきり望の事愛したいしな」
「ああ、俺は全然それでも構わないぜ……」
「ほな、そうしよ……!」
二人はそう決めるとお風呂場へと向かう。
二人は脱衣所に入ると服を脱ぎ、
「な、望……そもそも二人でお風呂に入るのも久しぶりなんやない?」
その雄介の質問に望は頭を俯かせ、
「ただ……今日は……その……流れでだな……」
何故か望は言葉を言い淀ませながら答える。
そんな望に雄介は何かを感じとったか雄介は、
「せやな……」
とだけ答えると望より先に服を脱ぎ浴槽に入って行く。
そんな雄介の行動に望は微笑み雄介の後について浴槽へと浸かるのだ。
「なんか、いいよな……」
「何がや?」
先程との会話とは違い望のその主語がない言葉に、雄介は望が何が言いたいのかが分からない。
「いや……なんでもねぇよ。 まぁ、さっき、脱衣所でした会話みたいなもんさ」
望はそう言いながら照れ隠しの為なのか浴槽の縁に顎を当て完全に雄介から視線を外す。
雄介は望のその言葉を少し考えていたが、やっと望が言いたい事が分かったのだが、今完全に雄介に背中を向けてしまっている望を後ろから抱き締めるのだ。
「そりゃな……もう一年やもん……望の気持ちは分っとるしな。 俺やって一年前の俺とは違うって思うとる……いや、俺は望の為に成長したんや……って言っても身長の方やないで……。 望に対しての心の成長や。 ホンマに俺は望の事が好きやから、今こうして成長出来たんや……望が恋人になってくれへんかったら、俺は多分、何も変わらへんかったと思うで……せやから、この一年間の成長は望のおかげやからな」
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