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ー過去ー44

「分かった……。なら、死なないように気を付けてくれよ。お前には俺という、一番悲しませたくない恋人がいるんだからな」 「ああ、分かっとるよ……それは絶対に約束するしな!」  雄介はようやく自信に満ちた表情で望を見つめる。  そんな雄介に、望も笑顔を向ける。  話が終わる頃には、酔いが冷めたのか、望の頬から赤みが消えていた。 「な、今日はどうするんだ?」  なぜか望は顔を赤くし、顔を伏せ、言葉を詰まらせている様子で、体をもじもじとさせている。 「……何?」  どうやら鈍感な雄介は、望のサインに気づいていないようだ。その望の様子に、目をパチクリさせている。 「雄介のバーカ!! 分からないんだったらいいんだよ……俺が恥ずかしいだけじゃねぇか……そのな……俺だけがこんな気持ちっていうのがさ……」  望は少し怒ったように立ち上がり、今度はソファに腰を下ろす。  さすがの雄介も、やっと望が何を言いたいのか分かったのか、席を立ち、望の後を追って、望の背後から体を抱きしめる。 「せやな……一昨日やったばっかやったけど、今日は記念日やからなぁ。そうそう! 今日は特別な日やし……な。あ! せや! 特別な日なんやから、地下室使わへん? 望は嫌やって言うけど、せっかく望の親父さんが作ってくれたんやし、特別な日くらいええやんか……」  望はその雄介の言葉に、一瞬間を空けたが、雄介の腕の中でゆっくりと頷く。 「ほな、決まりな……」  そう言いながらも、雄介は未だに望の体を抱きしめている。  望はその雄介の行動に腕を振り解くこともなく、しばらくそのままでいる。 「やっぱ、人の温もりっていうのはええもんやんな……」 「それって……」  望はその雄介の言葉にクスクスと笑いだす。 「前に俺が言った言葉じゃねぇか……」 「ん? その言葉……俺は気に入ってるんやって……。初めて望からそれを聞いたとき、めっちゃ嬉しかったしな……だから、ずっと俺の心の中にしまっておきたい言葉やからな」 「そっか……」  何だか望にしては珍しく微笑んでいるようにも思える。 「な、今さ……すっげぇ、胸がドキドキしてるんだけど……」  望はそう言いながら雄介の方に顔を向け、瞳を閉じ、ゆっくりと顔を近づける。すると、雄介も望のその合図に気づいたようで、ゆっくりと望の顔に近づき、望の唇に唇を重ねる。

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