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ー過去ー43
どうやら、望は真剣に話を聞いているらしく、ジッと雄介の事を見上げている。
「そっから、そいつとは話とかしとって、俺はいきなり告白されたんや……。なんやろ? そん時は切羽詰まっていたせいか……俺は頷いてしまっとったんや。それから、俺とそいつは夜中になるとトイレで会って、毎晩やるようになったんやなぁ。そりゃ、最初はやり方が分からなかったんやけど……そいつがなんや知っておったみたいでリードしてくれて、そこで、俺は男同士でも大丈夫だって事に気付いた訳なんやなぁ」
「そうだったんだな。……で、雄介はちゃんとそいつと別れたんだろ?」
そこは和也の件もあってか、望は心配どころだったらしく、そこに食いつき質問をしたようだが、どうやら雄介の方はその望の質問に対して顔を俯けて切なそうな表情をしている。
「そいつな……消防学校時代に死んでもうたんや……」
その言葉を聞いて、
「あ、ゴメン……。やっぱりさぁ、人の過去って聞いちゃいけないもんなんだな。雄介みたいな事もある訳だしな……」
「もう、あんな悲しい事は一回きりでええ訳やしな……。せやから、俺は立派な奴になって、しっかり、望を守るって決めたんや!絶対に望の事は死なせやせんよ」
「俺の方は大丈夫だと思うぜ。危険な仕事をしている訳じゃあねぇからな。そのセリフは俺が雄介に言ってやりたい言葉かな?」
望は真剣な顔をすると、
「雄介……絶対に死なないでくれって約束してくれねぇか?とりあえず、消防士として現役でいる間はずっとだ……それから、俺と付き合っている間は絶対に死なないって約束しろ」
「ち、待ってや……。絶対っていうのは無理な事やって……」
雄介はやっと望の方に顔を向け、雄介にしては珍しく自信無さそうな表情を向ける。
「お前にしては珍しいのな……。約束が守れないような顔したり、それを言葉にしたりするのはさ。」
「いや……そのな……。死なないようにっていうんやったら約束は出来んねんけど……絶対にっていうのは無理やって事やねんって……」
「……へ?」
「やっぱな、今まで確かに俺は何とか助かって来たけど、家族が居る人でも未婚者でも恋人が居る人でも、消防士になった以上、死なないっていうのは絶対に無理って事なんやって……俺、今まで消防士になって死んでおった人、何人も見て来たしな。せやから、そこは絶対に死なないっていう約束は出来ないって言ってるんやって」
望はその雄介の言葉にため息を吐くと、
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