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ー過去ー42

「んー、そうやねんけど……。やっぱり、心配なんや……今、一番好きな人に俺の過去を話して、もしかしたら、嫌われてしまうかもって思ってしまうしな」 「だから、大丈夫だって言ってんだろ……心配すんじゃねぇよ。俺はお前の過去がどんな事があったとしても、絶対に嫌わないからさ。ってか、逆に言ってくれねぇと俺はお前の事を疑っちまうかな?だってさ、俺の事信用してくれてないって事なんだろ?」  雄介はその望の言葉に観念したかのように息を吐くと、 「確かに望の言う通りやんな。恋人の仲って、信用もなきゃいけない訳なんやしな。しかも、そないな事で望との1年記念日を台無しにしたくないしな。ほな、分かった……ええよ……望がそこまで言うてくれんのやったら、俺の話してもな」  望はその雄介の言葉に笑顔を向けると、頬杖を付き、雄介の事を見上げる。 「せやな……何から話したらええねんやろ?」 「別に女性の話の方はいいよ。男性の事を好きになったきっかけっていうのを聞きたいかも」 「ほな、分かった……」  雄介はそう言うと、望に言われた通りに話を始める。 「あれは、消防学校に行ってる頃で、消防学校っていうのはやっぱ男ばっかりの所やろ?それに、そん位の年の時っていうのは若いし、まだまだ、そりゃ、やりたいお年頃やんか……それで、周りには男ばっかしか居らんかったしなぁ、そうそう!やりたい盛りの男子にはそりゃもー、過酷な状況やったって訳や。せやけど、やっぱまだ男性同士っていうのに抵抗はあったし、それに、男同士でのやり方なんか知らんかったしな。せやけど、その禁欲生活の中で、やっぱ、男でもええって奴はおるみたいで、毎晩、毎晩、怪しい声がどこからともなく聞こえてきて、流石の俺もやっぱ少しは女性との経験もあったし、そういう事に関しては気持ちええって事も体が知っておったしな。まぁ、とりあえず、俺は最初一人で抜いておったんやけどなぁ……でも、ある時……俺はいつものようにトイレで一人寂しく抜いておったって訳や……そしたら、その日は、どうやら、隣りの個室にも誰か居ったみたいで、なんつーのかな?俺とは違うて望みたいにこう色っぽい声が聞こえてきたんやけど……そんで、俺はその隣りに居る奴にいきなり呼ばれたんやって『僕の隣りの個室に入っているのは桜井雄介さんですよね?』って言われてもうたから、俺の方は思わず『そうや』って答えたんや……」  雄介は話をそこで切ると、チラリと望の顔を伺うかのように覗くのだった。

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