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ー過去ー55
裕実の挨拶に、望はちゃんと答えたはずだったが、裕実はいつもと違う様子の望に気づきながらも、それには触れずにロッカールームへと消えていった。
もし望がこんな状態だったら、きっと和也は色々と突っ込んでくるだろうが、その和也も今は隣の部屋にいるため、今の望の状態に突っ込んでくる者はいない。
しばらくして裕実はロッカールームから着替えを終えて戻り、望に向かって笑顔で声をかけた。
「望さん……僕の方は着替えて来たので、次は望さんが着替えて来てくださいね」
まだ気持ちがぼんやりとしているのか、望は裕実の言葉を理解しているものの、ワンテンポ遅れて返事をし、着替えるためにロッカールームへと消えていく。
そんな望の様子に、裕実は首を傾げるしかできなかった。
仕事が始まってからも、望の様子はいつも以上に暗く、誰もが心配するほど今日は特に調子が悪そうだった。
ようやく昼休みになり、食堂で裕実、和也、望が顔を合わせる。
和也は裕実に抱きつこうとしたが、裕実はそれをうまくかわし、次の瞬間には和也の腕を掴み、自分の方に引き寄せると、
「おー! 裕実ー! 真昼間から大胆」
語尾にハートマークが付きそうな感じで言う和也だったが、裕実はそんな能天気そうな和也を睨み上げた。そんな裕実の様子に和也が気付かないはずがない。裕実の表情に気づくと、和也は真剣な表情に変わった。
「何かあったのか?」
「流石は和也ですね。やっぱり、こういうことには敏感ですよね?」
「まぁな……。俺達のことじゃないなら、望のことだろ?」
「そういうことですよ。僕からは望さんに何があったのか聞けませんが、和也ならできるでしょう?」
「まぁ、一応な……」
「和也……今の望さんを見て、何か気付けませんかね?」
そう言われて、先にご飯を取りに行った望の姿を見つめる和也。
「あちゃー、なんかこう、明らかに暗いオーラが出ちまってるな……」
「ですよねー」
「あの様子だと、雄介と喧嘩したってとこかな? 望があんなに暗いオーラを出してるのは、雄介と喧嘩した時だけだからな」
「確かに、そうですよね……」
「何……? お前、そこまで気付いておいて望には何も突っ込まなかったのか!?」
「そう言いますけどねー。僕から望さんに突っ込める訳がないじゃないですかー。だから、和也に相談したんですよ」
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