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ー過去ー72

「どうする? 行ってみるか? 後はお前次第だからな。多分、お前は小さい頃から大変な目に合ってきてると思うから、小さい頃に経験しなきゃいけなかった事を経験して来なかったんじゃねぇのかな?って思うんだよ。だから、今、俺が沢山色んな事教えてやるからな。楽しい事が沢山世の中にはあるんだって事をさ。だから、知りたい事ややりたい事があるんだったらじゃんじゃん俺に言って来てくれたらいいからさぁ。知らぬが一生の恥って言うだろ?」  その和也の言葉に裕実は笑顔になると、 「分かりました! 分からない事や経験したい事があったら、和也に言うようにしますね。とりあえず、今は駄菓子屋さんっていう所に行ってみたいです」 「分かった……。じゃあ、行こうか?」  和也は裕実の肩へと手を置くと、裕実の事を誘導するかのように駄菓子屋の中へと入って行くのだった。  その二人の様子に呆れたようなため息を吐きながら、望は腕を組んで店の外で待っていた。  その駄菓子屋の店番をしているのはおばあちゃんで、店の奥にはどうやら自分の家があるらしく、店とその家の間に座って店番をしていた。  店の外で待っていた望は、そのおばあちゃんの姿を見て、育ててくれたおばあちゃんと重ね合わせているようだ。先程まで和也に対しては呆れたような表情をしていたのに、今ではそのおばあちゃんを見て微笑んでいるのだから。  望はそのおばあちゃんから視線を外し、和也の姿を捉えると、和也と裕実が二人仲良く話している姿が目に入ってくる。  どうやら昔ながらの玩具を手にし、和也が裕実にその玩具について遊び方を説明しているようだ。和也が風車を手にし、息を吹きかけている姿が目に入ってきたのだから。  そう和也が説明していると、裕実は表情をコロコロと変える。  驚いたような表情や笑ったり、微笑んだりして、本当に裕実は和也といて幸せなんだろうと思うのだ。  望はそんな二人の姿を微笑ましそうに見ていた。誰しも親友達がそんな姿を見れたならば、嬉しくしない表情はしないだろう。  暫くして二人が駄菓子屋から出てくると、和也は大きな袋を二つ位下げて出てくる。 「お前さぁ、馬鹿か!?ってか普通駄菓子屋でそんなに買って来るもんなのかよ」 「だってさ、懐かしくなっちまってついな。後は裕実にも食べて欲しかったっていうのもあったしよ。だから、大人買いしちまったって所かな?」

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