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ー過去ー74
和也はそう言うと、店に並んでいる野菜を手にし、買い物を済ませる。
「望さぁ、小麦粉はあんだろ?後、卵とか?」
「多分、あると思うけどな」
「……って、折角、天ぷらにしようと思ってたのに、小麦粉がなかったら意味ねぇだろ?」
「ってか、そう文句言う前に、俺に確認しなきゃダメだろーに。何処が料理上手なんだよ。やっぱ、和也ってたまに抜けてるとこあるよな?」
「あ!でも……小麦粉が無かったら無かったで他の何か作るから、今買った物は無駄にはしねぇよ」
和也は一旦そこで言葉を止めると、
「とりあえず、買い物の方はもういいかな?もう、八時だし店の方は終わりみたいだしよ」
「なぁ、一応、天ぷらにはしたけどさ、天ぷらを作るには時間が掛かるし、お腹の方は平気なのか?」
「とりあえず、俺の方は平気だけどな」
「僕の方も大丈夫ですよ」
「二人はいいかもしれねぇけど、作る俺の方がピンチだったりするんだよなぁ。ちょっと何かお腹に入れておきたいかも……」
「でも、もうお店の方はやってないみたいだぜ」
「なら、コンビニでおにぎり一個位買って、それで保たせるから大丈夫だ」
「そうだな」
望は表情で「やっぱり」という顔をしていた。朝、確かに雄介には言い訳を言っていたのだが、今の和也の言葉を聞いて改めて納得したようだ。
望たちの場合、仕事が終わってからご飯を作る事になるのだから、簡単な料理の方が早く食べられる。しかし天ぷらのように時間が掛かる料理になると、すぐには食べられないので、お腹が空いてくるのは当たり前だろう。それに病院にいる時にだって、お昼ご飯を食べた後に何か口にすることもしないので、この時間になってくると自然にお腹が空いてくるのかもしれない。
確かに今望は「お腹が空いていない」とは答えたものの、お腹の方はとっくに空いてしまっている。まぁ、望の性格上そんな事は口にしない、と言った方が正しいのかもしれない。
望はどうにかお腹が鳴るのを押さえ、お腹が鳴っても周りに聞こえないようにしているようにも思える。
和也はコンビニに寄っておにぎりを食べながら、三人はやっとのことで帰宅するのだった。
「しかし、今日はあんな所で雄介に会うなんてな」
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