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ー過去ー75
「まぁな……。まぁ、この地域での事故とかの場合にはレスキューが出動しなきゃいけない時は雄介達がいる春坂レスキュー隊が出るんだろうしな」
「まぁな」
やっとの事で三人は家に着いたようだ。
荷物を持っていた和也は望に玄関のドアを開けてもらうと、
「よっこらっせ!」
という掛け声を上げ、とりあえず荷物を玄関先へと上げる。
「そんな掛け声を上げる程、重かったのか?それでしたら、僕もお手伝いしたのに……」
「何言ってんだよ。望もだけど、裕実みたいなか細い腕で、こんな重たい荷物を持たせられるか」
和也は優しさのつもりで言った筈なのだが、どうやら裕実にはそういう風に聴こえていなかったらしく、裕実は頬を膨らませ、
「どーせ、僕は和也みたいな腕なんかしてませんよー。それでも、毎日のように患者さんの事見てるんですから、和也までもとはいきませんけど力の方はあるんですからねー」
「そ、そういう意味じゃなくてな……」
和也の方も今の裕実の言葉で完全に裕実が誤解している事に気付いたのであろう。 一瞬、焦ったのだが、
「仕事では確かに裕実も力があるのかもしれねぇけど、プライベートでは俺に任せろって言ってんの……。ってか、そういうの普通なんじゃねぇ?俺が重たい荷物持つっていうのはさ」
「あ!そういう事だったんですね。確かにそこは完全に僕の勘違いだったみたいです」
「そうだよ。まぁ、俺の方もお前の事勘違いさせるような事言ってたっていうのも悪いけどさ……」
そんな事を望の家の玄関先で繰り広げている二人。 そんなラブラブな状況で、その上なかなか中に入らない二人の後ろで待たされている状態の望は相当イライラしているのかもしれない。さっきまで笑顔でいた望だったのだが、次第に目が座って来ているのだから。
「つーか、お前等なぁ、玄関先でイチャイチャしてねぇで、さっさと中に入れよな!」
きっと望の方は二人の事を待ってるのがめんどくさくなってきたのだろう。急にそういう声を上げるのだ。
「あ、ゴメン……」
和也はその望の声に顔を上げると、不機嫌全開の望の顔がある。流石の和也もその望の表情に『ヤバい』とでも思ったのであろう。望には何も言わずに荷物を持ってリビングへと向かうのだ。
きっといつもの和也なら望がそんな表情になった時には望の事を茶化すのだが、今の望の場合には完全に和也の方に否があり、きっと和也が何か言えば、望の雷が落ちると悟ったのであろう。だから、さっさとリビングの方に向かったのかもしれない。
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