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ー過去ー94

「なーんだ、例えばか……。 でも、そんなに雄介のことを思って、仕事辞めたいって言葉が出てくるなんてさぁ」  和也のその言葉で、和也が何を言いたいのかが分かったのだろう。望は目を座らせ、和也の額にデコピンを食らわせた。 「痛ってー!」 「それくらいやられて当然だろうが……お前が言いたいことが分かったからな。 それに今日の和也はそんなことを言える立場じゃあねぇだろうが……」 「あー! 分かった! 分かった! ゴメン……ゴメン……俺が悪かったです」  まだ望に打たれたところが痛いのか、和也は額を押さえながら言った。 「本当に望さんからしてみたら、雄介さんっていう人は大切な人なんですね」 「まぁな……」  望は裕実の言葉には素直に答える。 「チェッ! 俺だけ仲間外れかよー!」  和也はご飯を口にしながらぼそぼそと独り言を言っているようだが、あまりにも小さかったのか、望達にはどうやら聞こえていなかったようだ。 「なぁー、和也。 そう言えばさ、本当に新城と本宮君の件については大丈夫なんだろうな?」 「大丈夫に決まってんだろー! 実際、昨日、二人は夕飯に行ってるんだからさぁ。 もしかしたら、その後はホテルなんかに行ってたりしてなぁ」  和也はニヤケながら話すが、望はどうやら納得していないような表情をしていた。 「ちょっと考えてみろよ……? 和也は新城のことをあまり好きじゃねぇのに……和也は一昨日から新城と一緒の仕事を始めたんだよな? ってか、そこを新城が変に思わないわけがねぇんじゃねぇのか? それで、新城はいきなり本宮君と一緒に食事に行ったりしてさ……なんか二人の展開が逆に早すぎないかな? って思ってよ。 例えば和也があの二人に何かしたっていうんだったら急展開っていうのはおかしくはないんだろうけど、俺は和也からそんなことを一切聞いてないんだから……急展開過ぎねぇかなー? って思ったんだけどさ」  望の推測に和也はようやく気づいたようだ。 「あー! 確かに望の言う通りかもしんねぇ!」  さっきまでの和也はどこに行ったのか。今度は顔を青ざめ、いつも以上に落ち込んでいるようにも見える。 「……ってことは、やっぱり!? 和也はアイツ等には何もしてないってことなのか!?」 「そうなんだよなぁ。 実は何もしてないのに、あの二人は急展開してんだよなぁ。 確かに初めは嬉しかったんだけど、望のその話を聞くと、新城が俺の行動に何か気づいてるのかもしんねぇなぁ」  和也はそう言うと、ため息を漏らした。

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