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ー過去ー95
「ほらー、そうなんだろ? まったく、最初はさぁ、裕実のために『新城と本宮君をくっつける!』って意気込んでたのに、今のままじゃ新城にバレてんじゃねぇのか? だから、新城は本宮君と口裏を合わせて、昨日はわざと夕食を食べに行ったんじゃねぇかな? って思ってるんだけどよ」
「確かに、アイツらだったら、あり得そうなのかもー! もー、ダメかもしんねぇ……。 今までの計画が! ってか、裕実と恋人になる資格がねぇのかもしれねぇな」
昨日の夜はわざと明るく振る舞っていた和也だが、今日の彼はどうやら本気で元気をなくしているようだった。いつも明るい和也が項垂れてしまっているのだから、その落ち込み具合は深刻そうだ。
「そう落ち込むなって……。 まだ、あくまで、もしかしたら!? って推論だろ?」
「でも、その可能性は高いだろ?」
「なら、和也がアイツらに何となくでいいから聞いてみたらどうだ?」
「それとなく聞いてみたって……昨日の夜はアイツら二人きりだったんだぞ。絶対に口裏合わせしてるに決まってんじゃねぇか……」
「あー、確かにな」
望も和也の話に納得したところで、今まで話に参加していなかった裕実がふいに口を開いた。
「和也は本気で僕のことが好きだったんですね」
唐突な裕実の一言。だがその表情は、和也同様にどこか沈んでいた。彼もまた、頭を俯かせてしまっている。
「和也がそんなに落ち込んでいるということは、新城先生と本宮さんが本当はくっついていなくて……僕と和也が本気の恋をするチャンスがないから落ち込んでいるんですよね?」
「ああ、当たり前じゃねぇか。あの裕実の過去の話を聞くってことじゃなくて……俺は裕実と改めてちゃんとした恋人同士になれないことに落ち込んでるだけなんだよ。前に裕実と約束したしな。だけど、今回のことについては俺が新城のことを甘く見てた結果ってことだしな」
「……ってか、今日の和也は和也らしくないですよ! まだ、あくまで推測だ! って望さんも言ってるじゃないですかー!」
「だけど、望の言う通り、新城と本宮はわざと俺の前ではくっついてるフリをしている可能性が高いんだぜ」
「和也! そこで諦めてしまっていいんですか!? じゃあ、僕たちの関係っていうのはそこで終わりになっちゃうんですか!?」
「終わりになんかさせたくねぇよ! させたくはねぇんだけど……」
和也の弱気な言葉に、裕実と望は息を揃えるようにため息を吐いた。
「どうやら、今の和也に何を言ってもダメみたいだな」
望はそう呟くと、一旦話を止め、少し考え込むように視線を落とした。
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