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ー過去ー96
「いい加減にしろよ和也! もう、時間がねぇんだから……着替えに行くぞ!」
「分かってるに決まってんだろ! マジでそんなに怒鳴らなくてもいいじゃねぇかぁ」
「怒鳴らないと気合いが入らないだろうと思って怒鳴ってやってんだよ!」
「そんなにでかい声で言わなくても分かったんだよ!」
「イライラしてんのは分かるけど、俺に八つ当たりすんなよなぁ」
「八つ当たり!? してねぇから……」
「十分してんじゃねぇか……。それを八つ当たりって言うんじゃねぇのか?」
「もう! 二人共朝から止めて下さい!」
裕実は和也と望の間に入って二人を睨みあげる。
「二人共、親友なんでしょう? なら、喧嘩はダメです!」
「喧嘩じゃねぇよ……」
「そうそう……親友同士だから言い合う時には言い合うっていうのかな? 言い合って、お互いの意見をぶつけ合うって感じだな。心の底から言い合えるっていうやつだ」
そう和也は自慢げに言うのだが、何故か望は和也の頭をポカリと叩く。
「まーったく、毎回毎回痛ってーんだけど……何で望は直ぐに叩くかなぁ?」
「誰と誰がそんな仲だって!? 和也はそう思ってるのかもしれねぇが、俺の方はそう思っちゃいねぇんだけど……」
「そうか……望は俺の事そう思っちゃいねぇんだな。分かった……もういい……これからは、望には何も相談しねぇよ。その方が望の方もいいんだろ?」
とそれだけを告げると、和也は食べ終えた食器を置き、先に玄関の方へと向かう。
「望さん! 本当にこれでいいんですか?」
後に残された裕実はそう心配そうに望を見上げる。
「別に……俺は構わなねぇよ。お前等が仲が良ければ俺には関係ない事だろ?」
望のその答えに裕実は何も答えることができず、和也同様に食器を置くと玄関へと向かう。
「きっと、これでいいんだよな?」
一人部屋に残された望は独り言を言うと食器を置き、二人を追うように玄関へと向かうのだが、もうそこには二人の姿はなかった。
「あれ? 先に駐車場の方に行っちまったのかな? まさか、アイツ等、俺を置いて行く気じゃねぇだろうな?」
望が慌てて外へ出ると、和也はどうやら望の家の玄関まで車を持ってきていたらしく、玄関前に和也の車が止まっていた。
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