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ー過去ー114
「やっぱ、俺は望に怒られねぇと元気出ねぇからな」
「なら、いっぱい怒ってやろうか?」
望は和也の言葉に瞳を座らせ、和也の前で仁王立ちになる。
「あー、やっぱいいですー。望に怒られるのはたまにでいいかな?」
和也が慌ててそう言うと、望は優しい表情に戻り、机へと向かった。
和也はその姿に胸を撫で下ろす。
「和也は調子乗り過ぎですからー」
「そだな……そこ気を付けねぇと……ってか、そんなことより! ニュースだよ! ニュース!」
始めは落ち着いて話していた和也だが、急に興奮したような声を上げた。
「やっぱりさぁ、実琴と新城がいい感じみたいなんだよなぁ。で、実琴って完全なMだからさぁ、余計に気が合うみたいでよー。一昨日の夜に食事した後にホテルに行ったみたいだしなぁ。しっかし急展開だとは思わねぇ? 俺らは確かにあの二人をくっつけたいとは思ってたけど、とっくに彼奴らは勝手にくっついてたって感じだったしよ」
「……って、本当に手放しで喜んでもいいんでしょうか? 和也は実際に二人の会話しか聞いてないんでしょう? この前、望さんと話した時に二人が口裏合わせしてるってことはないんですかね?」
「んー、そこはまだ分からない所なんだよなぁ。そう言われてしまうと、二人が口裏合わせしている可能性っていうのはあるのかもな……。やっぱ、まだ、新城と実琴がカップルっていうのは怪しいってところなのかな? なんか、こう決定打みたいなのがあるといいんだけどさぁ。ま、それも確かな証拠みたいなのはないのか……。まぁ、病院内だからってのもあるんだけどさぁ。彼奴ら、俺のこと除け者にしてもいいから病院内でヤってくれねぇかなぁ?」
「それは、まぁ、仕事が終わってからだったらいいんだけどな……」
「後は休憩中にとか?」
和也はふざけた調子で言っていたが、裕実と望の前ではどこか浮いているようにも見える。
「やっぱりー、俺だけなのかぁ? そんな風に思っちまうのはさぁ」
「そうみたいですね。望さんなんか和也の言葉に呆れて、机に向かって仕事始めちゃったみたいですしね。あー、僕の方も仕事ー、仕事ー」
裕実はそう言いながら部屋の掃除を始めた。
「確かにそんな考えになるのは俺だけなのかもしれねぇけど……何も二人して仕事に集中しなくてもいいだろうがぁ」
「ただ単に仕事を始めただけですからね」
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