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ー過去ー116

 望が再び机に向かうと、和也が大声を上げた。 「分かった! 雄介が医者か看護師になったら、望が集中できなくなるからなんじゃねぇの? だから、雄介にはなって欲しくないっと……」 「そんな事じゃねぇよ……」  望は普通に答える。 「あれ? 違ったか?」  和也は予想が外れたかと思うと、裕実の方は何かを想像しているのか、再び顎に手を当てて考えた。そして、考えた直後、突然正面を向いて、 「あ! 分かりました!」 「……へ?」  珍しく大声を上げた裕実に、和也は驚いた様子で視線を向ける。 「きっと、雄介さんの白衣姿を見ていられないからなんじゃあないんでしょうか?」  その裕実の言葉に、望は一瞬動きを止めた。  その望の行動を、和也が見逃すわけがない。 「やっぱり、裕実の方か……。望は雄介の白衣姿に弱いっと! だから、雄介が医者や看護師になるのは反対だったって訳だ。それで、仕事に集中する事が出来なくなると!」 「あー! もう! うるさいなぁ!」  望は顔を真っ赤にして和也たちに怒ったが、それが逆効果だったのかもしれない。 「はい! ビンゴ! そうかー……確かに雄介に白衣なんか着られたらヤバそうだもんなぁ」 「実は僕もそう思ってたんですよねー。絶対に雄介さんは白衣似合いますから」 「だから、簡単に答えが出た! っと!」  和也はソファの上でうつ伏せになりながら裕実を見上げる。 「あー! マジ、和也はうるさいから出てろー!」  明らかに望は怒ってはいない様子だった。 「分かったってー! もう何も言わねぇから……ってか、望がこのネタ出してきたんだろうが! だから、今回の話は望の自爆って事になんだろ? そんな事聞いてこなきゃ、こんな事にならなかったんだしよ」  確かに和也の言う通りだった。望がこんな話題にしなければ、この話にはならなかったのだから。  望は和也の言葉に言い返すことができず、再び机に向かい集中して仕事を始めてしまう。  その頃、裕実は掃除を終わらせ、モップを掃除用具入れに片付けようとしていた。 「僕の方は終わりましたけど……。和也、僕たちの方は帰りましょうか?」 「だな。望の仕事邪魔しちゃ悪いしな……」  二人の会話を、望は耳だけを動かして聞いていた。

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