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ー過去ー117
いつもなら雄介がいない日は、望の家に行くのが常だった二人だが、今日はそのまま帰ると言っていた。
望としては、自分から二人を家に誘うことはないので、引き留めることもなかった。
裕実が着替えを終えてロッカールームから出てくると、
「じゃあ、俺たちは帰るか?」
「そうですね……」
裕実は和也にそう答えた後、望の方に視線を向けて、
「では、望さん……お疲れ様でした」
その声に、望は視線を向けず、右手を軽く上げて答える。
「ああ、お疲れ様……」
裕実と和也がドアを開けて出ていこうとしたその時、望が声を上げた。
「よし! 終わった!」
「今日は仕事早く終わったんだな。とりあえず、お疲れー」
和也が手を振ると、その直後、望が慌てたように叫んだ。
「あー! ちょ、ちょっと待った!」
「なんだよー」
「だからだな……」
望は何かを言おうとするが、言葉を詰まらせている。
「あーと……だからだな……たまには帰りに飯かなんか食ってかないかなぁ? って思ってよ」
その言葉に裕実と和也がクスリと笑う。そして目を合わせた二人は、同時にクスクスと笑い出した。
「な、なんだよー、二人して……」
「やっぱり、望の口からじゃそこまでが限界だなぁーって思ってよ」
「……へ? それって、ど、どういう事だよー」
「いやな……いつも雄介がいない日はだいたい望の家に行ってたじゃねぇか。だからさ、俺たちがそのまま望を誘わずに帰ったら、望はどうするのかな? って思ってたんだよなぁ。まぁ、実際今日は望の家に行く理由もなかったけどな。でもさ、もしこのまま帰っちまったら望はどうするのかなーって思ったんだよ。そしたら、『飯食いに行かないか?』までは言えたんだなーって思ってよ。だから、裕実と笑ってたのさぁ」
「そっか……二人して俺の事をハメてたって事か?」
「まぁ、少しはそれもあるけど……望の場合、それくらいしないと自分から言わないだろうしな」
「ま、確かにそうなのかもしれねぇな……」
望にしては珍しく、自分の行動を認めるような言葉を漏らした。
「ま、いいや……。望がそう言ってくれたんだし、みんなで食事に行こうぜ。勿論! 望から言ったんだから、望の奢りでな!」
和也は冗談めかして言ったが、その隣にいた裕実が和也の腕を軽く叩き、小さな声で言った。
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