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ー過去ー118

「それは流石に望さんには失礼でしょう!」  裕実は頰を膨らませて怒る。  しかし、裕実の予想に反して望は笑顔を見せ、 「ああ、それは別に構わねぇよ。だって、和也には昨日の詫びもあるしな」  その言葉に和也は裕実に向かって、 「な、言ってみるもんだろ?」  和也のその言葉に裕実は呆れたようにため息を漏らす。 「とりあえず、着替えてくるから待っててくれよ……」 「ああ、待ってるから早くしろよー」  望は和也にそう言ってロッカールームへと向かう。  望は着替えるのが早い。白衣を脱いでハンガーに掛けロッカーへしまい、その後スーツの上着とジャケットを羽織るだけだからだ。  望がロッカールームから出てくると、和也に、 「よし! 行くか!って言いたいところだけどさぁ、車はどうするんだ? 二台で行くか?」  和也はわざとそう聞いたのだろう。望がどう答えるかで、今日は望の家に行くかどうかが決まるからだ。 「そうだなぁ、どうするかぁ? 和也達は今日は二人きりでいたいんだよな?」 「まぁ、当然!」 「そっか……。なら、二台で行くしかねぇなぁ?」  望は少し暗い表情で答える。  和也はその様子に気付き、 「本当に望はそれでいいんだな?」 「ああ、久しぶりに今日は一人で過ごすことにするよ。いつも和也達にはお世話になってるしな。たまには二人きりで過ごしたい時もあるだろうしさぁ」  望にしては珍しく素直な言葉だった。それに和也は一瞬目を丸くしたが、すぐに望の本音だと気付き、微笑みながら言った。 「分かった!望……ありがとうな。今日は望の言葉に甘えて二人だけの時間を過ごすよ。車の方は悪いけど二台で行く。望は俺の車の後ろに付いて来てくれればいいしさ。どうせ、あのいつもの焼肉屋だろ?」 「だってさぁ、あそこはウチの病院のスタッフだと安くしてくれるからな。久しぶりに焼肉もいいだろ?」 「そうだな……。でも、どれくらい行ってなかったんだろ?」 「そうだなぁ? 俺はあんまり行ってなかったかもしれねぇな。雄介と出会う前は和也とよく行ってたんだけどな……」 「だよなぁ。しかも、全部望の奢りだったしな」  懐かしい話をしながら、三人は病院の駐車場へ向かう。和也と裕実は和也の車に乗り、望は自分の車に乗り込んで、焼肉屋へと向かうのだった。

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