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ー過去ー119

 先に焼肉屋の駐車場に着いた和也は車を止めると、ふと気付いた。 「ん? あれ? 新城の車なんじゃねぇか? まぁ、俺の記憶が正しければだけど」 「僕は確かに新城先生とコンビを組んでましたが、新城先生の車って知らないんですよねぇ?」 「そうか? 俺は毎日のように見てるからなぁ。あ、そうだ! 新城の車、俺の車の隣にあるからよ」 「そうだったんですかぁ? じゃあ、あのシルバーの車ですかね?」 「そうそう、シルバーの車。だけど、シルバーの車なんてよく見かけるからな」  そう言いながら和也は車から降り、恐る恐るナンバープレートを覗き込む。 「ゲッ! やっぱり、新城のだったわぁ!」 「……へ? 何で分かったんですか?」 「さっき言っただろ? 毎日のように新城の車見てるって。だから、ナンバープレートの番号も覚えてるってわけだよ。まぁ、この焼肉屋には個室もあるし、向こうが俺の車を見ない限り、俺たちがここに来たことなんてわからないんじゃないか?」 「別にいいんじゃないですかー。今は新城先生と会っても、新城先生はもう和也じゃなくて本宮さんなんでしょう?」 「あ、そっかー、忘れてたぜ。最近一緒に仕事してたから余計に忘れてたのかもな」 「やっぱり、たまに和也って抜けてる所ありますよね?」  そんな話をしていると、後から来ていた望の車が到着したようだ。途中から他の車が間に入ってきたりして離れてしまうのは仕方ないことだろう。  望は車から降りてきて、ひと息つきながら言う。 「悪ぃ……遅くなっちまったみたいでさ……」 「仕方ねぇよ。二台で来てるんだからさ……。それより、新城がこの焼肉屋に来てるみたいだぜ。ほら、俺の隣に新城の車が止まってんだろ?」 「……へ? そうなのか? なんで和也は新城の車だって知ってんだ?」  裕実と同じ質問に和也はちょっと困ったように言う。 「あのなぁ、二人して同じ質問してくんなよな。ま、望には言ってねぇんだけど……新城の車と俺の車って、病院の駐車場では隣なんだよ。だから毎日のように新城の車っていうのは見てるわけさ」 「だってさ、その車種って結構見かけるやつだろ? だから、新城のとは限らないんじゃないか? って思ったんだけどよ」 「それは、毎日のようにナンバープレートを見てたから覚えてたんだよ」

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