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ー過去ー120
「あ、そういう事か……。 ま、この店は個室だし、見つかるって事はねぇだろー?」
「ま、確かに……そうだな……」
二人からの似たような質問責めに、和也は一気に疲れが出てしまったようだ。和也はとりあえず先に店の中へ入ろうとした直後、
「なぁ、もし、アイツらの隣の個室にしたら会話聞けるんじゃねぇのか?」
その和也の言葉に裕実と望は足を止める。正確には、望より先に歩いていた裕実が足を止めたことで、望も足を止めざるを得なかったということだろう。
「ですよねー?」
裕実にしては珍しく和也の言葉に同意する。
「やっぱり気になるよな? 実琴と新城の関係って……」
「そりゃあ、気になりますよー。僕と和也の運命がかかってるんですかねぇ」
「だよなー?」
和也は何かいいアイデアでも思いついたのだろうか。ドアを一気に開けると、
「いらっしゃいませ……」
そう店員が言った直後、
「スイマセン……。さっき、病院のスタッフがこちらに来ませんでしたか? もし来ていたのなら、そのスタッフの隣の個室にしていただきたいんですが……」
「同室ではなく、お隣の個室でございますか?」
「はい」
「お隣の個室でしたら空いておりますよ。今すぐにでもご案内いたします」
「ありがとうございます」
店員が先導して歩き、和也たちは新城たちがいるであろう個室の隣の個室へと案内される。
「……って事は新城たちは右隣の個室にいるって事だな。来た時に右隣の個室の下駄箱に靴があったからな」
この焼肉屋は全室個室で和室だ。和室に統一するためなのか、個室の中は掘りごたつになっていて、夏は机だけで、冬になると炬燵になる仕組みだ。そのため、全室で靴を外で脱ぐようになっている。
和也は早速、右隣の個室の様子をうかがうために壁に耳を貼り付けた。流石にテーブルについているだけでは話は聞こえてこない。
「肉を焼く音はするけど……アイツらの声も聞こえてくるぜ」
「本当ですか?」
その和也の言葉に食い付いたのは裕実だ。
「……で、二人の会話の内容はどんな感じなんですか?」
和也は唇に人差し指を当てて、
「シー! 静かにしてねぇと、よーく聞こえてこないんだよな。だから、ちょっと待っててくれねぇ?」
「分かりました」
和也に静かにしてくれと言われ、望たちがいる個室は静かになった。
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