「お前って、朝十時くらいに帰宅してきてたんだなぁ」 「まぁな……朝の九時には終わんねんけど、あーだこーだで帰宅時間っていうのは十時くらいになってまうって訳なんや」 「それから帰宅してきて……家事やらなんやらをやるって訳なんだな？」 「せやな……」 「それだと数時間くらいしか寝れなくねぇか？」 「確かに、数時間しか寝れへんけど……まぁ、勤務中に何もなければ向こうで仮眠はできるしな。せやから、数時間寝れれば十分やしな」 「そうなんだな」 「ま、そういう事やって」 「つーかさ、俺……お前の生活ってあんま知らないんだけど。ほら、お前が休みの時はだいたい俺の方は仕事だろ？　前に俺が入院していた時に面会時間とほぼ同時にお前は来てたじゃねぇか。そん時っていうのはお前、寝ないで来てたって事になるのか？」 「まぁな……寝ないで行っておったなぁ。ってか、寝れへんかったって言うた方が正確なのかもしれへんな。だってな、寝てもうたら面会時間ジャストに行ける訳ないやんか。せやから、寝れへんかったやって……」 　その雄介の言葉に、急に望の方は吹き出してしまう。 「お前らしいのかもな」 「まぁな」 　雄介はご飯を食べ終えると、食器をキッチンの方へと運ぶ。 「な、望……俺たちは今幸せやんな」 　そんなことを雄介はキッチンを背にし、望に向けて笑顔で言う。 　そんなことを唐突に雄介に言われてしまい、望は再び食べていた物を吹き出しそうになる。 「……なんやろ？　急に思い出したんやって。最初の頃は望の性格をよく分かってなくて……望とよく喧嘩したなーって思うてな。ほら、まだ望の家で俺が望と一緒に住んでない頃な……俺が望に抱きついたら拒否されてもうた事とかな……まぁ、そこは和也のおかげで仲直りする事ができたけどなぁ」 「あ、まぁ……そ、そんな事もあったな。俺の心の中とお前の心の中でのすれ違いってやつだったな」 「そういう事や……。それから一緒に住む事を俺は考えておったんやけどな。後、望の言葉で印象に残ってる言葉もあんのやで。『温もりを忘れたくない』とか『ずっと一緒にいたい』とかな。多分、その望の言葉を聞いてなかったらきっと今頃はこんな風に幸せな時を過ごしてなかったと思うわぁ」 「まぁな……」 　望はそう小さな声で答えると、誤魔化すかのように、 「ごちそうさまでした」 　と言うのだ。 「んじゃあ、俺、風呂に入ってくるな」 「ちょ、ちょい待ってぇな！　俺の方も一緒に入るって！」