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ー天使ー17

「痛てっ……」  そう和也が顔を上げた時には、望と裕実の姿はすでに前にあり、和也は仕方なく二人の後をついて行く。 「とりあえず、俺の車でいいか?」 「って、望の車より俺の車がいいんじゃね? そしたらさぁ、助手席に座るの……裕実でいい訳だしよー。琉斗君なら望の車より俺の車の方が興味持つんじゃねぇのかな? 俺の車、青色でスポーツカーだしさ」 「まぁ、それはどっちでもいいけどさ」 「なら、俺が運転するから、俺の車!」  和也はなぜか子供のように無邪気にはしゃぎ始める。  さっきまでしょげていたのはどこへ行ったのだろうか。和也の性格は、どうやら立ち直りが早いらしい。 「まぁ、和也がそう言うなら、和也の車でもいいけどさ。それだと、俺が琉斗と二人きりになっちまうじゃねぇか」 「とりあえず、望は琉斗とは一回会ってるんだから、望と琉斗でいた方がいいだろ?」 「そういうもんなのか?」 「そういうもんだろー。子供って、紹介して、いきなり大人側から近付くより、子供の方が興味を持って近付いてくれるのを待ってた方がいいんだぜ……」 「そうなんだな。それなら、確かに、一回だけでも琉斗に会っている俺が琉斗と一緒に後部座席にいた方がいいことになるのか」 「そういうことだ……」 「とりあえず、駐車場に行く前に託児所に寄ってかねぇとだな」  そんな独り言を言った後、望は病院の敷地内にある託児所へと向かった。  望の後ろからついてきた和也と裕実は、 「こんなとこに託児所があったんだなぁ」 「和也にしては珍しいですねー。ここに託児所があるの知らなかったんですか?」 「ああ……知らなかったんだよなぁ。今、初めて知ったんだけど……。しかし、望の親父さんは色々とやってるんじゃねぇのか? この託児所だって、ここで働く人の子供を預けることができるんだろ? それなら、安心して働けるじゃねぇのか?」 「和也みたく、人の心が分かる方なんじゃないんでしょうか? そうじゃなければ、敷地内に託児所を作ろうとは思いませんからね。望さんはお父様のこと悪いように言ってますが、とても素敵なお父様だと僕はそう思いますよ」

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