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ー天使ー18

「多分だけど……いいお父さんだよな……」  そう和也が、珍しく切なそうな表情をしている。  そんな和也の様子に裕実が気付かないわけがない。 「確か、和也はお母様だけに育てられたんでしたっけ? だから、お父様って、どんな感じなのかを知らないんでしょうか?」 「ま、そういうことだな……」 「じゃあ、琉斗君と同じなんですね!」  なぜだか、裕実はそう明るく言うのだ。 「確かに、同じだよな」 「琉斗君、和也になら、心開いてくれるんじゃないんですかね?」 「そうだな……そうかもしれねぇな。ま、元から、俺が子供好きってのもあるけどな」  二人がそんな話をしていると、望が琉斗の手を握り、託児所から出てきた。  望は和也たちの前まで来ると、和也と裕実を紹介する。 「こっちが和也兄ちゃんで、こっちが裕実兄ちゃんだからな」  望が琉斗にそう紹介すると、琉斗は望の手を離し、和也と裕実の顔を見上げ、 「宜しく、お願いします……」  そう笑顔で右手を差し出した。  その琉斗の行動に、和也は驚いた表情を浮かべたが、すぐに笑顔になり、琉斗と握手を交わした。  それから四人は和也の車へ向かい、先ほどの話の通り、望は琉斗と一緒に後部座席に座る。  車に乗ると、琉斗は望の方を見上げ、 「ねぇ、望兄ちゃん……何で、望兄ちゃんの車じゃないの?」  望の車を琉斗はまだ二回ほどしか見ていないはずなのに、すでに覚えているようだ。望はその言葉に目を丸くし、 「あ、いや……今日は和也兄ちゃん達も望兄ちゃんと雄介が住む家に来てくれるって言うからさ……」 「そうなんだー。ってことは、この車は和也兄ちゃんの車?」  琉斗は今度、運転している和也の方を向いた。 「ああ……そうだよ……和也兄ちゃんの車だよ。もしかして、興味持ってくれたのか?」  その和也の質問に対し、琉斗は首を横に振り、 「僕は望兄ちゃんの車の方がカッコイイと思う! よく分からないんだけど……和也兄ちゃんの車より望兄ちゃんの車の方がカッコイイから!」  その琉斗の言葉に、和也は転けそうになった。  確かに、子供が思ったことをストレートに口にするのは分かっていたが、まさか自分の車より望の車の方がカッコイイと言われるとは思わなかったのだろう。どうやら、和也は少なからずショックを受けているようだった。

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