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ー天使ー89
「ん? 救急車の中やで……」
そう笑顔で答える雄介。
「つーか、何があって、俺は救急車の中にいるんだ?」
「流石に覚えてへんのか? さっきまで俺たちが遊園地で遊んでいたのは覚えておるか?」
「ああ、一応な」
「ほんで、観覧車に乗った訳や。そこで急に観覧車が止まってもうて、望はそこで転倒してもうたんや。怪我したとかでな……とりあえず今さっき助かったんやで」
「あー! 思い出した! 俺、観覧車の中で立ってて景色を眺めてた時に、急に観覧車が止まって……そっから、覚えてないや」
「なんや、裕実の話やと……頭を椅子の角で打ってもうたとか?」
「そっか……どうりで後頭部が痛い訳だ」
「ま、そういうことや。とりあえず、望がなんともなくて良かったで。前みたいに記憶喪失にでもなっておったら、どうしようかと思っておったけどな。とりあえず、この救急車は春坂病院に向かってもらってるらしいからな」
「あ、おう……」
「あー!」
そんな中、いきなり和也が大きな声を上げる。
「なんやねん! 急に大きな声出して……」
「あ、いやなぁ、俺、思わず救急車に乗っちまったけど、車を置いてきちまったなぁーって……」
そんな和也の話に望はクスクスと笑い出す。
「和也ってさぁ、やっぱり仕事とプライベートじゃ違うよな? プライベートの時はどこか抜けてんだよ。頭のネジが一本抜けたようにさ」
「まぁなぁ、前にも似たようなことがあったような?」
今度は裕実がクスクスと笑う。
「確かに前にも似たようなことありましたよね。望さんたちを飛行場まで送ってった時に……車は忘れてませんでしたけど、給料日前でお金が足らなくなってしまったんじゃなかったんでしたっけ?」
「そうだったな!」
和也はふざけたように言うと、望が口を挟む。
「そんなことがあったのか?」
「んー、まぁなぁ。まぁ、過去のことは気にしねぇタイプだけどさ、似たようなことがあると何気にショックだったりするんだよな」
「まぁ、春坂病院まで行ったら、電車で遊園地まで行くしかないな」
「んー、とりあえずさぁ、望、雄介、車貸してくれね? そしたら車で行ってパァーって帰って来るからよ」
その和也の提案に望は溜め息を吐くと、
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