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ー天使ー96

「なぁ、雄介! 琉斗がいねぇぞ!」 「……へ?」  その和也の言葉に、雄介も辺りを見渡す。しかし、和也の言う通り病室内には琉斗の姿がなかった。 「トイレにでも行ったんやろか?」  雄介は慌てて病室を出て、すぐそばにあるトイレを覗いたが、誰かいる気配はなかった。  雄介が慌てて病室を出て行った後、望たちも病室を出て琉斗を探し始める。だが、外科病棟には琉斗の姿は見当たらなかった。 「まさか、誘拐にあったと違ゃうやろな?」 「まさかぁ、そんなことはないだろ? 外ならともかく、病院内でそんなことがあったら病院の死活問題になっちまうからなぁ」 「せやけど、実際に琉斗はこの病院におる気配が無いんやで……」 「まだ外科病棟しか探してねぇだろうがー。とりあえず、他の病棟とか探してみて、それでもいなかったら……その雄介が言っていたことかもしれねぇけどな」  雄介と望が話をしていると、一緒に琉斗を探していた和也が廊下の角から姿を現した。その様子に気づいた裕実が、和也の腕の中にいる人物を指さして笑顔を見せる。  和也の腕の中には、すっぽりと収まり眠る琉斗の姿があった。  和也は静かに雄介たちの前まで来ると、小さな声で言った。 「小児科病棟にあるプレイルームの端っこの方で寝てたんだよ。琉斗の奴、疲れてたんだろうな」  そう言って、和也は琉斗をそのまま雄介の腕にそっと渡した。 「それに、せっかく琉斗のお母さんのところに来たのに、雄介が美里さんと話してばっかだったから、つまらなくなって病院内を探検してたんだと思うぜ。で、プレイルームを見つけて最初は遊んでたけど、疲れて眠っちまったみたいだな」 「せやけど、何で和也は琉斗がプレイルームにおるって分かったんや?」 「それは、さっきも言ったろ? 探検したくなったんだって。それぐらいの年頃になると、探検したくなるもんだろ? ま、子供の気持ちになって考えたら分かったってとこだな」 「やっぱ、和也の頭はまだまだ子供ってとこだな」  そう言って、望は和也の頭をポンポンと撫でる。  そんなことを望にされたことのない和也は、ため息を吐いた。

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