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ー天使ー97
「どうせ、俺は考え方が子供ですよ。ま、それはいいからさぁ、琉斗を美里さんのとこに一度連れて行って、美里さんを安心させてから帰ろうぜ」
「そうだな」
琉斗は雄介の腕の中で眠ったまま、四人は再び美里の病室へと向かう。
「姉貴……琉斗、見つかったし、今日は帰るな」
雄介は美里の病室のドア付近で、腕の中にいる琉斗を美里に見せると、笑顔を向ける。
「それなら、良かったわぁ。雄ちゃん……琉斗のこともよろしくね」
「ああ、任しとき!」
雄介はそう言って、美里の病室を後にする。
「とりあえず、美里さん元気そうで良かったな」
「せやな。望……姉貴の手術は今週の木曜やったっけ?」
「ああ、今週の木曜日だな」
「ほなら、姉貴のことホンマに宜しくな」
「ああ、大丈夫だって!」
そして四人は駐車場に向かう。そこで和也は、いつも停めている場所に車がないことに気付く。
「あー! そうだったんだっけー! 俺の車、遊園地の駐車場に置きっぱなしじゃねぇか!」
「……って、俺も車は家だったんだっけ」
そんな二人の様子に、裕実と雄介は溜め息を漏らす。
「とりあえず、望ー」
そう甘えた声で和也が望に近寄り、
「一回、望の車を取りに行ってから、遊園地まで乗っけてってくれね?」
と、両手を合わせてお願いしてきた。
「それしかねぇよなぁ。俺のしかない訳だしよ。それに俺ん家が近いしな」
「あ、おう!」
確かに和也は望にお願いしたのだが、まさかこうもあっさりと一発で望が納得するとは思っていなかったのだろう。ある意味、拍子抜けの状態だ。
それから五人は歩いて望の家へ向かい、望の運転で遊園地へ向かう。
みんなでどこかに出かける時は、いつも望が運転を避けるのが常だったが、今日は自ら運転席に座っていた。その様子に和也が気付かないわけがない。
「なぁ、望……どうしたんだ? 望が運転するなんて珍しいよな?」
「和也がいつも言うじゃねぇかぁ。俺の車は運転し辛いってさぁ。だから俺が運転してるだけー。それに、雄介は琉斗のこと抱いてるしー。俺しか運転する奴いねぇだろ?」
確かにそう言われてみれば納得はするのだが、和也にとっては複雑な心境のようだ。
例え望の車であっても、いつもの望ならあーだこーだ文句を言って運転を和也に押し付けるはずなのだから。
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