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ー天使ー99
そんな話をしていると、なかなか和也の車に来ない裕実にしびれを切らしたのか、和也が望の車へと戻ってきた。
「何してんだよー、裕実。早く俺たちも帰ろうぜ……」
そう言う和也に、裕実は鋭く睨み上げる。
「和也! 望さんたちに何か言うことないんですか?」
「何か、言うこと!?」
裕実にそう言われて、和也は瞳を宙に浮かせながら腕を組む。
「分からないんならいいです! 僕はこのまま望さんの車で帰りますからねぇ」
怒ったような口調で裕実が言うと、和也は笑顔になって裕実の頭をポンポンと撫でた。
「分かってるよ。さっきは自分の車があったことに安心しちまって、すっかり忘れてたけどな」
そう言いながら、和也は望たちの方へ顔を向けた。
「望……わざわざここまで送ってくれて、ありがとうな。本当に助かったぜ」
「別に気にすんなって」
望がさらりと答えると、和也は苦笑しながら続けた。
「でも、一応な。さっきは自分の車があって冷静じゃなかったんだ。あの車、ほんと欲しかったんだよ。小さい頃はミニカーでしか持てなかったけど、いつかは乗りたいって思って頑張ったんだ」
「それはさっき裕実から聞いたよ。小さい頃からお小遣いやお年玉を貯めて買ったんだろ?そりゃ、愛着湧くよなーって思ったよ」
和也は望のその言葉に一瞬目を丸くしたが、何かを思い出したように話を続ける。
「まぁな。青色のスポーツカーが欲しくてさぁ。やっと手に入れた車なんだ。小遣いだけじゃなくて、お母さんの手伝いもしてたよ。一回手伝うごとに十円しかもらえなかったけど、それでも必死に貯めたんだ。まぁ、今思うと十円も良かったけど、お母さんの手伝いをしてたおかげで、一人暮らしが苦労なくできてるんだよな」
「そうだったのか……俺はそんなことしてなかったからなぁ。ま、そん頃から塾に通ってたし、中学には私立行ってたしな」
「ま、人間……人生はそれぞれってことやなぁ。俺なんか、小学校の頃は宿題もせんと毎日遊び回ってたわ」
その雄介の言葉に、望が突然大きな声を上げた。
「あ! 勉強で思い出した!」
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