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ー天使ー118

「そうなんですか」 「爆発事故じゃ、時間かかるよな?」 「あ、ああ、まぁな」  望は動揺しているのか、どもったような返事をした。  そんな望の様子に和也が気付かないわけがない。和也は望の腕を引き、病室の端の方へと移動し、美里には聞こえない距離で話し始めた。 「望がそんなんでどうするんだよ。今日は大事な手術が控えてるんだぞ」 「そんなこと分かってるよ……でも……」  望は和也の話を聞きながらも、ちらりとテレビの方へ視線を向けた。 「気になるのは分かる! だけど、今は……」 「分かってるから、何も言うなよ!」  望は和也に向かってそう言い返した。しかし、その声があまりにも大きく、病室内に響いてしまった。  美里は何かを察したのか、望と和也がいる方へ顔を向けると、柔らかい声で言った。 「吉良先生……雄介のこと、すごく心配なんでしょう? でもね、雄介なら大丈夫ですよ。いつも、いつも、事故の現場に行っても無事に帰って来てますから。あの子は、どうやら運だけは強いみたいで……」  逆に患者に励まされる形になってしまったようだ。  望は深く息を吐き、力強く頷くと、笑顔を作って美里に向き直った。 「ですよね。雄介は大丈夫です!」  その言葉に和也も笑顔を見せ、美里に向かってこう言った。 「まぁ、雄介にもしも何かがあった時には、望がいるから大丈夫ですよ!」  しかし、和也の言葉に望は和也を鋭く睨みつけた。おそらく「もしも」という言葉に反応してしまったのだろう。 「お前なぁ!」 「大丈夫だって! 美里さんは流石、雄介の姉っていうだけあって、内心はすごく強い女性だからさ。それに比べてお前の方が、女々しいんじゃないか?」  和也の言葉に、望は呆れたようにため息をついた。一方で美里は笑みを浮かべ、二人の方を向いて言った。 「梅沢さんの言う通りです。もしも雄介に何かがあった時は、吉良先生がいらっしゃるので安心していますよ」 「ですよねぇ。雄介が前に何回も怪我した時だって、望がちゃんと助けてたんで大丈夫ですよ! もちろん、美里さんの手術も望に任せたら安心ですから!」

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