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ー天使ー121
「それで、もし気持ちが切り替えられなかったら、どうするのかな?」
「そん時は……」
望はそこまで考えていなかったのだろう。言葉に詰まっている。
「『もしも』の時を考えてないってことだね」
望の頭の中はすでにいっぱいいっぱいなのだろうか。裕二は次々と質問を投げかけるが、望はその質問に答えられずにいる。
「まぁ、望が一人になって平静になれなかった場合、桜井美里さんの手術は私がやってもいいんだよ」
裕二のその言葉に、望は顔を俯けると、
「いや……ダメだ。美里さんの手術は俺がやる。何でか分からねぇけど、美里さんの手術は他の人じゃなくて、俺がやらなきゃいけない気がしてるんだよな。だから、手術までには雄介のことは考えないようにしてくるから」
望は急に顔を上げ、裕二と視線を合わせると、
「だから、美里さんの手術は俺に任せてくれねぇか?」
「分かった。ただし、もし君が気持ちを切り替えられなかった場合には、私が桜井美里さんの手術を担当することになるからね」
「ああ、分かった。そん時は俺が頭を下げてでも院長に頼むことにするよ」
「それはいいとして……一人では心細いと思うから、和也君と話でもしながら、心を落ち着かせた方がいいと思うよ。君にとって和也君は親友なんだし、だからこそ、和也君は望のことをよく知っているわけだから」
「ああ、分かったよ」
裕二は和也の方へ視線を向けると、
「これで、この病院では医者と看護師がコンビなわけが分かったかなぁ?」
「あ! あー! はい!」
「つまりはこういうことなんだよ。医者と看護師が仲良くなって、片方が弱っている時に助け合えるってことなんだ。それに、和也君は人の心が分かる人だから、望と組ませた。望は難しい子だからねぇ。和也君なら、望の心を変えることができるって思ったんだよ」
「そういうことだったんですか」
「もちろん! 他の医者や看護師も相性が良さそうな人たちと組ませているんだよ。看護師からの意見も、医者からの上から目線の言い方もないから、みんないい関係みたいだしね。だから、和也君! 望のことは君に任せたからね」
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