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ー天使ー126

「だからさぁ、望が言いたいのは、朝方、春坂市内で大きな事故があっただろ? お前、そこに行ってたんだよな? それで、望はずっとお前のことを心配してたんだよ。『事故に巻き込まれてないかな』ってな」 「あ! ああ! それな! 大丈夫やって! あの事故は人を助けるだけやったし、そんな危険なことやなかったから!」  そう雄介は笑顔で言ったが、なぜか望は手に拳を握りしめ、突然、雄介を見上げるとこう言った。 「いつも、いつも……俺ばっかりが心配しなきゃなんねぇんだよ! お前の仕事がそういう仕事だってことは分かってる。だけど、やっぱり毎回毎回、なんで俺がこんなに心配しなきゃなんねぇんだ!? もう! 俺の胸が張り裂けそうなぐらい心配ばっかしてんだからな!」  今までこんなことを口にしたことがない望が、急にどうしたのだろうか。望は瞳に涙を浮かべ、雄介の服を掴んで見上げる。 「あ、ホンマ……ごめん……」  雄介は言い訳をすることもなく、ただ謝罪する。彼は昔からそういう人間だった。望もとっくに分かっているはずだ。 「望の気持ち、分かるわぁ。俺の方からはもう何も言わんよ。だってな、むっちゃ心配やろなぁ? 朝からあんなニュース見たら、誰だってそう思うわ」  和也はそう言うと、望の肩を支えながら続けた。 「まあ、ここだとさぁ、声が廊下に響くから、とりあえず部屋に入ろうぜ」  和也に支えられながら、三人は部屋に入りソファに腰を下ろす。  ソファに座った途端、雄介が口を開いた。 「やっぱ……俺、ホンマに医者になる! もう望に心配させたくないし、望の悲しそうな顔は見たくないから。今の望の顔見て、ホンマに決心ついたわ! レスキューは今月中には辞める。望、それでええねんやろ?」  しかし、望は顔を俯けたまま、答えられないでいる。  そんな時、和也が望の気持ちを代弁するかのように言葉を紡ぐ。 「今はそういう問題じゃねぇんだよ。お前さぁ、今の望の精神状態を分かって言ってるのか? 今日はお前のお姉さんの手術の日だろ? 朝からあんなニュースを聞いたら普通でいられるわけがねぇだろ! それで『今月中にレスキューを辞める』って話を今ここで出すのは、どう考えてもタイミングが悪いだろ!」

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