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ー天使ー127
「分かってるけどな。今回のことだけじゃなく、望が前から俺が現場に行くたびに心配してたのも分かってる。いつもは何も心配してなさそうな顔をしてたけど、今日の望は悲しそうな顔をしてたしな。だから、吹っ切ったんや! 完全にレスキューを辞めることをな」
「まさか、今になって望がお前のことを心配してたって気付いたわけじゃねぇだろうな?」
「いや……気付いてたよ。でも、望が『不純な動機で医者や看護師になりたいと思ってるならやらないほうがいい』って言ってたから、俺はずっとレスキューを辞めるか迷ってたんや。でも、もうホンマに辞める! これからは望に心配させとうないしな!」
「ま、それはそれでいいんじゃねぇの? 俺は何も言わねぇよ。それを決断するのは雄介自身だからな。でも、今はお前のお姉さんの手術のことを考えなきゃならねぇんだよ! せっかく俺が望の精神状態を安定させてたのに、お前が来たことでまた望の精神状態が不安定になっちまったんじゃねぇのか?」
そこで、和也は俯いたままの望の顔を覗き込むと、
「もう時間がねぇんだけど、どうすんだよ? 美里さんの手術は。望の親父さんに任せるか?」
その問いに、望は真剣な表情で立ち上がり、
「俺がやるに決まってんじゃねぇか! よく分からねぇけど、俺がやらなきゃならねぇ気がするんだよな。雄介のこともあるし、琉斗に頼まれてるわけだしな。とりあえず、今はプライベートのことより仕事しなきゃなんねぇって分かってるから」
さっきとは違う表情を見せた望に、和也も安心したのか立ち上がり、
「そうだよな! 美里さんのことは琉斗に頼まれてるんだから、望がやらないといけねぇよな!」
望は気合を入れ直したのか、気持ちを切り替えて言い放つ。
「雄介はさ、『家族控え室』で琉斗と待ってろよ。絶対にお前の姉さんの手術、成功させてくるからな!」
「あ、ああ……ほな、よろしく頼むわ」
望の真剣な表情に、雄介は一瞬戸惑ったものの、すぐに笑顔で返した。
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