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ー天使ー128

 雄介にとって、望の「仕事の顔」を知らなかったからなのかもしれない。最近の雄介は、プライベートでの望しか見たことがなかったのだから。  以前、雄介が入院していたときには、すでに二人は恋人同士だった。そのため、たとえ望が仕事で雄介の病室を訪れたとしても、真剣な表情を見せた記憶はない。もしかしたら、付き合い始めの頃は違ったのかもしれないが、そんなことはもうすっかり忘れていた。  三人は一緒に部屋を出て、プレイルームで遊んでいた琉斗を呼びに行く。そして、雄介と琉斗は望に案内され、『家族控え室』で美里の手術が終わるのを待つことになった。 「ほな、望……姉貴の手術、改めてよろしくな」 「分かってるって。大丈夫だからな」  雄介と望が握手を交わすと、琉斗も望に向かい、頭を下げて言った。 「お母さんのこと、よろしくお願いします!」  子供らしからぬ礼儀正しさに、望は微笑みながら琉斗の頭を撫でた。 「大丈夫だよ。絶対に運動会の日には、琉斗のお母さんも行けるようにしてやるからな」  望のその言葉に安心したのか、琉斗は望を見上げ、大きな声で返事をした。 「うん! 絶対にだからね!」 「よし、望! 行くか!」 「ああ!」  二人は気合を入れ直し、美里の手術に向かおうとした。しかし、振り向いた瞬間、そこには裕二の姿があった。 「どうやら、私の出番はなさそうだね。君が桜井美里さんの手術を担当するんだね?」 「ああ、もちろん! 雄介のためにも、琉斗のためにも、美里さんのためにも、俺がやらなきゃなんねぇしな!」  裕二は穏やかな表情で頷きながら言った。 「雄介君も無事に帰ってきたみたいだし、安心したんだろう? さっきとは表情が全然違う。和也君のおかげもあるのかな?」 「全部だよ。和也のおかげでもあるし、雄介が帰ってきたってのもあるしな」 「なら、美里さんの手術は君に任せても大丈夫そうだね」 「ああ、もちろん! 俺がやるに決まってるだろ!」 「それなら安心したよ。時間がなくなってしまうから、そろそろ行っておいで」 「ああ!」

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