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ー天使ー130

「あ、はい! ありがとうございます」  雄介は裕二に頭を下げたが、どうにも気になることがあったらしい。少し戸惑いながら顔を上げると、申し訳なさそうに問いかけた。 「あの……一つお聞きしたいことがあるのですが……」 「ん? 何だい?」 「先ほど、どうして私が院長に聞きたいことがあるって分かったのでしょうか? 和也にもよく見抜かれるんですが……」 「ああ、そのことか。それはね、慣れれば簡単なことだよ。人の気持ちになって考えれば、大抵のことは分かるものなんだ」 「あ! そういえば、前に和也も同じようなことを言っていました!」 「だろう? 君が何か言いたそうなのに言いにくそうにしているのが分かったから、君の気持ちになって考えてみたんだよ。そうしたら、答えが出たというだけのことさ」 「そうだったのですね……」 「その反応を見るに、君はあまり気にしていなかったようだね?」 「はい……お恥ずかしい話ですが、そうなんです」 「なるほど。だが、逆にそういうところが望には合っていたのかもしれないね。長年一緒にいた和也君でさえ、望の性格を完全には変えることができなかった。それに比べて君のように純粋な心を持っている方が、彼の心には響いたのだろう」  裕二は微笑みながら続ける。 「私や和也君の場合、人の気持ちを考えすぎてしまうところがある。相手の気持ちを言葉にしてしまうことで、逆に相手を怒らせてしまうこともあるんだ。望はそういう部分に敏感だからね」 「確かに……和也は望のことを怒らせることがありますが、本人いわく、望が心に溜めているものを吐き出させるためだそうです」 「和也君なりのやり方で、望の心に向き合っていたのだね。それはそれで素晴らしいことだと思うよ。ただ、君の純粋さや無邪気さが、より望の心を開く助けになったんだろう。友達にしても恋人にしても、望は本当に良い人間関係に恵まれている」 「裕実も望と本音で話をすることがあるようですし、確かに周りの人間には恵まれていますね」 「本当にそうだね。君たちがいてくれるおかげで、望は少しずつ性格を変えることができたんだと思う。本当にありがとう、雄介君」  初めて裕二から名前を呼ばれた雄介は、驚きと少しの慌てた様子を見せた。  それも当然だろう。今、目の前で会話をしている相手は、恋人の父親なのだから。

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