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ー天使ー133
「ああ……分かっとる。ほな、ホンマに後は姉貴のこと、よろしくな」
雄介は望に一歩近付くと、耳元で小声でささやく。
「あと二、三日……望とは居られへんけど、姉貴が治ったら、思いっきりラブラブしようなぁ」
雄介は望にキスをしようとしたが、さすがに思い直し、望に向けて笑顔を浮かべるだけに留めた。
望は久しぶりに雄介からそんなことを言われ、顔を真っ赤にする。
その様子を見ていた和也は、望の横でクスクスと笑い出した。
「相変わらず、望はそういうことに慣れねぇのな」
「う、うるせぇ……今の聞いてたのかよ」
「耳をダンボにして聞いてたから、しっかり聞こえてたんだよ」
「……ったく」
望が顔を赤くしながらうつむく様子に、和也はいたずらっ子のような笑みを浮かべる。だが、すぐに真剣な表情で雄介に向き直った。
「後は俺たちが見てるからよ。大丈夫だからさ」
「ああ。分かっとるよ。お前たちが居るから、安心して家に帰れるんやしな。ほな、よろしく頼むわ」
いつまでもここに居ても仕方がないと悟った雄介は、琉斗の手を引くと、望と和也に軽く手を振って病院を後にした。
それから一週間後。
雄介と琉斗は美里の病室を訪れた。そこには、一週間前とは比べものにならないほど顔色の良い美里がベッドに座っていた。
そんな美里の変化に気づいた琉斗は、雄介の手を離れると、美里に向かって駆け寄り、その体をぎゅっと抱きしめた。
琉斗にとっても、この一週間は寂しい時間だったのだろう。勢いよく美里に飛びつくと、大きな声で呼んだ。
「ママ!」
笑顔で美里を見上げる琉斗に、美里も微笑み返す。
「大丈夫よ。吉良先生のおかげでママは元気になれたからね。今まで寂しかったでしょ? 琉斗……今まで以上に甘えていいからね」
「うん!」
琉斗は美里の服をぎゅっと握りしめ、離れようとしない。
そんな琉斗の姿を、雄介、望、そして和也が温かく見守りながら微笑んでいた。
「今日は特別に、琉斗は美里さんのところに泊まっていいからな」
望がそう言うと、琉斗は目を輝かせながら望を見上げる。
「本当にいいの!?」
「ああ。もうママは大丈夫だからさ。今日は特別にママと一緒に寝ていいんだよ」
「うん! ママと一緒に寝る! 望兄ちゃん、ありがとう!」
「うん」
望が優しく頷くと、琉斗はさらに嬉しそうに笑顔を見せ、美里に寄り添い続けていた。
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