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ー決心ー5

「違うよー。医療に関係することじゃなくて、学校のことね」 「そんなん同級生に聞いたらええやんかぁ」 「同級生? 僕は友達とか作る気ないけど。そもそも大学に入ってからは雄兄さんと一緒にいたいしね。だから、友達がいたらめんどくさくない?」 「ほんなら、俺に頼らんと、自力でなんとかせぇよ! 俺は望とかお前と違って、自分の勉強だけでいっぱいいっぱいになると思うし、お前に付き合っとる暇なんかないやろ」 「なら、僕が教えてあげるよ。それならいい?」  よくも次から次へと言葉が出てくるものだ、と雄介は呆れる。  今日、何度目かの溜め息を漏らすと、 「あー、もー、そこはもう勝手にせぇ!」  と、疲れた様子で吐き捨てるように言う。 「雄兄さんに許可もらったし、僕の勝手にさせてもらうよ。前言撤回は効かないからね」  きっと雄介は、歩夢にそう言ったことを後で後悔するだろうが、今のところその自覚はなさそうだ。  二人は電車に乗り、同じ駅を目指す。  今の時間帯は帰宅ラッシュで、電車内は混雑していた。朝のラッシュほどではないが、それでも窮屈に感じるほどだ。朝は皆が一斉に同じ時刻に電車に乗ろうとし、ドアが閉まらないほどの混雑になる。しかし帰りは時間に追われることが少ないため、人々が分散して電車を利用しているのだろう。  だが、不景気のこの時代、バブル時代のように飲んでから帰る人は少なくなり、会社から直接帰宅する人が増えた。そのため、この時間帯の電車もそれなりに混雑していた。  電車に揺られること二十分。ようやく目的地である春坂駅に到着した。  その頃には、さっきまで見えていた夕日も水平線の彼方に沈み、空はオレンジから黒へのグラデーションを描いていた。 「とりあえず、望がロータリーで待っとるし」 「なら、乗せてってよー」 「アホか! これからやっと、俺は望と一緒におれる時間やのに、お前を望の車に乗せられるかっちゅうねん」  雄介の言葉に、歩夢はクスリと笑うと、

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