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ー決心ー15

 雄介はそう決めると、望にどうアプローチするかを考え始める。だが、望の場合ストレートに言えば断られるのは間違いない。  それでも、和也のように変化球を使って誘うのは雄介の性格に合わない。  さて、どう仕掛けるか。  望は体を洗い終えると、雄介が浸かっている浴槽へと入ってきた。だが、いつものように雄介から視線を反らし、そのまま湯船に身を沈めてしまう。こういったところは、昔から全く変わっていない。 「ほな、今度は俺が体洗ってくるわ」  雄介は湯船から上がると、体を洗い始める。その間にも望をどう誘うか頭を巡らせているが、なかなか良い案が浮かばないようだ。  だが、ふと何かを思い出したように、軽く手を叩く。 「せやせや、望に前に言われたんやった。したい時には遠慮せんでええってな。望から言わへんのやったら、俺から誘えばええだけや」  雄介は独り言を漏らしながら笑顔になり、泡をさっと流すと再び湯船へ戻った。  望に視線を向けると、望は真っ赤な顔をしていた。 「どないしたん? 真っ赤な顔して……のぼせたんか?」 「あ、いや……なんでもねぇって……大丈夫だから……」  望は慌てて雄介から視線を外す。久しぶりに雄介の顔をまともに見てしまい、恥ずかしくなったのだろう。それに、さっき素直なことを言ってしまった自分を少し恥じているのかもしれない。 「やっと二人きりになれて、俺もレスキュー隊辞めて医大に入って、落ち着いたし……また、恋人らしいことせぇへんか? ほら、土日は二人とも休みやし、今度の休みはデートとか……の前に、夜もな。最近、前みたいにゆっくりできるようになったんやし……ええかなって思うてんけど……どうや?」  しばらく黙っていた望は、一息ついてから答える。 「雄介がそう言うんだったら、俺は構わねぇよ。前に言ったろ? そういうのは言っていいってさ」 「ほんなら、ええってことやんな。けど、望は明日から明後日まで仕事やろ? 体、大丈夫なんか?」 「気にすんな……大丈夫だからよ」

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