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ー決心ー37
雄介はドア際に立ったのだが、気付いた時には歩夢は人に押されて反対側のドアへと行ってしまっていた。
少し離れた歩夢に、雄介は安堵の溜め息を漏らす。そう、歩夢から少しでも離れることができたからであろう。これであと二駅分は歩夢と距離を取っていられることになる。
と、そんな時、雄介の携帯がポケットの中で震えるのだ。
流石に電車の中ということもあって雄介は音にはしていなかったが、バイブレーションで携帯が震えたのだから気付くのは当然だった。だが、誰からメールが来たかは開くまでは分からない状態だ。
雄介は今のメールはきっと望からだと思い携帯を開く。すると、それは望からのメールではなく、すぐそこにいる歩夢からだった。
雄介は面倒くさそうな顔をしつつ、首を傾げながらも仕方なく携帯を開くと、そこには目を見開くような内容が書かれていた。
『雄兄さん……助けて……誰かが……僕の……』
とだけ書かれており、メールの文は何故かそこで切られていた。
『誰かが……僕の……』とはどういうことなのだろうか。だが、歩夢は雄介に助けを求めるような文を送ってきている。
雄介と歩夢の距離はそれほど離れてはいないものの、この混雑ではどちらも動ける状態ではない。
しかし、歩夢はこんな混雑した状況で雄介に助けを求めている。
もしかしたら歩夢が雄介の気を引こうとして仕掛けた罠なのかもしれないが、雄介の性格上、助けを求められれば無視はできない性格でもある。
雄介は頭を下げながらも、歩夢がいるであろう場所まで何とか向かうと、歩夢の耳元で、
「どないしたん?」
そう尋ねた途端、歩夢は赤い顔をして雄介を見上げるのだ。
その歩夢の表情に、雄介は今、歩夢に何が起きているのかを悟ったらしく、再び耳元でこう聞く。
「誰かにどこか触られてるんか?」
雄介が尋ねると、歩夢は顔を俯かせて肩を震わせていた。
「ちょ、何があったん!?」
そう慌てた様子で言う雄介に対し、
「ホント、雄兄さんって、単じゅーん……」
「……はぁ!?」
雄介はわざわざ歩夢のところまで来たのに、そんなことを言われて唖然とする。雄介からしてみれば、歩夢が何を言いたいのか全く分からないのだ。
「雄兄さんは、僕が助けを求めたら来てくれたんだよね……そこが、僕からしてみたら嬉しいよ」
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