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ー決心ー64

 雄介が二階へと上がると、望はどうやら着替えているようだ。  そんな望の姿に雄介は安心したような溜め息を吐き、自然に望に振る舞う。 「な、今日は何処に行きたい?」 「あ、ぅん……えーと……とりあえず、俺は何処でもいいかな?」 「そっか……ほなら、俺が好きな場所でええんやな?」 「ああ」 「ほなら、俺、東京のええとこって、まだよく分からんし、ほんま、適当に車走らせてもらうで……。ほんで、変なとこ行ってもうて、もし、帰って来れないような場所やったら、後は望に任せたな」 「分かった、それでいい……」  望は言葉こそ棒読みではあったのだが、雄介との会話についてきているのだから、先程のことについては怒っていないのであろう。  雄介も簡単に着替えると、フッと気づく。  望がいつもの私服ではないことに気づいたのだ。しかも今まで雄介が見たことのないような格好をしている。 「ん? その服、どうしたん?」 「前にデートしようって言った時にお前だけ新しい服買ってたから、俺も休みの日に買ってきといたんだよ」 「そうやったん。めっちゃ、似合うやんかぁ」  そう笑顔で言う雄介に対し、望は顔を俯けてしまう。  そりゃ、誰だって誉められたら顔を赤くするに決まっているだろう。それが好きな相手なら尚更だ。  いつもの望の私服はシャツにGパン姿が多いが、今回は灰色のVネックの長袖に黒色のGパンという格好であった。  確かにさほど変わったとは言えないが、いつもと違う格好をしている姿に気づいてあげるというのは、本当に好きな相手だからなのかもしれない。 「な、雄介……どっちがいいと思う?」 「……へ?」  いきなり望からの質問に声を裏返す雄介。  そりゃ、当たり前だろう。例え望にとって恥ずかしいかもしれない言葉でも、『何が?』が抜けていれば、例え雄介でも伝わらないことだ。 「だからだな……俺の眼鏡がある姿と無い姿のことなんだけど……」  やはり望にとっては言いにくい言葉だったのだろう。 「せやなぁ? 俺は眼鏡が無い方の望が好きやけど……そんな姿の他の奴には見せとうないから、ある方がええなかな?」

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