「ああ、分かった……」 　望はそう言うと、棚から出しかけていたコンタクトレンズの箱をそっと棚へとしまってしまう。 　望はきっと雄介とのデートのためにコンタクトレンズを買い、それで行こうとしていたのだが、雄介にそんなことを言われてしまい、少し残念そうにコンタクトレンズをしまってしまったのであろう。 「じゃ、行くか……」 「ああ、せやな！」 　望達が出掛けようとした時間には、既にお昼を回っていたようで、太陽が真上を差していた。 　そこは仕方ないところなのかもしれない。昨日はあれだけのことがあったのだから。デートに行こうと決めたのはその事件の後なのだからだ。 　雄介は望から車の鍵を受け取ると、車のエンジンを掛け、車を走らせる。 　久しぶりにまともにデートをすることになった二人。 　もしかしたら、久しぶりのデートに胸を高鳴らせているのかもしれない。 　暫く雄介が車を走らせていると、賑やかな場所で車を止め、雄介は独り言を漏らす。 「ここら辺やったかなぁ？」 　そう雄介は周りを見渡し、車を近くの駐車場へ止める。 　望は繁華街に車を止められ、キョロキョロと辺りを見渡している。 「ここから、何処に行くんだ？」 「ええから、ええから……今日は俺に付いて来てくれるんやろ？」 「あ、まぁ、そうなんだけどさ」 「ほなら、付いてきてー。望は外では手繋がないんやし、俺の後付いて来たらええねんからな」 「分かった」 　望は雄介に言われた通りに雄介の後について行くと、雄介はある店の中へと入って行く。 「雄介、まさか……こんなとこに行くのか？」 「まぁなぁ」 「ここって、パチンコとかいう店じゃねぇの？」 「ホンマに望は世間のことなんも知らへんのやなぁ。ここはパチンコやなくてゲーセンや、ゲーセン……。この前、言うてたやろ？　望は色んなとこに行ったことがないって……せやから、今日はそういう普通なとこ連れて行こうかなぁ？って思ったんや」 「そうだったのか……。ここがゲーセンっていう所だったのかぁ。でも、耳が悪くなりそうだな」