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ー決心ー69
「ほんなら、水族館にしよ」
雄介は携帯を見ながら水族館の場所を探し始める。
「今の携帯って、そんなことも出来ちまうのか?」
「んー、まぁ……そうやなぁ。パソコンほど情報量は多ないけど、そこそこええ場所やったら出てくるしなぁ。あ、せや!」
携帯に目を向けていた雄介が突然顔を上げ、こう言った。
「な、なぁ、和也達みたく同じ携帯にせぇへん? そしたら、望に色々と携帯の機能とか教えてあげられるしさぁ」
「え? あ、まぁ……いいけどよ」
今日はどれだけ嬉しいことが続くのだろうか。望にとっては驚きの連続だ。恋人同士で同じ携帯を持つだなんて初めての提案だし、写真を待ち受け画面にするなんて考えたこともなかった。こんなにデートが楽しいものだとは思ってもみなかった。これまでは二人でデートするたびに何かしらの事件が起きていたから、今日こそが初めて「普通のデート」を楽しめる日なのかもしれない。
「ほなら、先に携帯にする?」
「そうだな……でも機種変って、少し時間掛かるんだろ? その間に水族館に行けるか?」
「流石に三十分で水族館を回るのは無理あるなぁ」
「そうなのかぁ、じゃあその間、どうする?」
「ほなら、のんびり恋人気分で洋服選びでもせぇへんか?」
雄介は笑顔で提案する。その笑顔に望も自然と応える。今日の望は「雄介に付いて行く」と決めたのだから、雄介が言うことを素直に受け入れるつもりでいる。途中で断ったりすれば、さっきみたいに気まずい空気になるかもしれない。それだけは避けたいと思う望だった。
二人は携帯ショップに入り、まずは新しい携帯を選び始める。
「望はどんなのがええ?」
「俺はなんでもいいよ」
「んー……でも、暫く使うもんやしなぁ。ちゃんと選んでや? 確かに電話とメールが使えればええかもしれへんけど、機能を使いこなせればもっと携帯は楽しくなるもんなんやで。それに、せめてデザインくらいは『これ』って決めてほしいねんけどな」
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