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ー決心ー77

 流石、毎日のように運転しているだけあるのかもしれない。雄介もそれなりに望の車に慣れていたのだが、やはり望の方が運転が上手いくらいだ。  ただ、望が運転すると、いつもと違う状況なのか雄介も静かなままであった。  少しずつ闇へと変わる中、周りのネオンはますます明るくなっていく。  東京は眠らない街だというけれど、本当に眠らない街だ。どこかしらお店が開いているのだから、東京は眠らない街と言われているのだろう。  そして街には人が溢れている。  そんな中、いつもの道を曲がる望。すると、一つ曲がっただけで、あんなに人々がいたのにもかかわらず、今は人一人さえいない道へと出る。  確かに中心部はネオンも溢れ、騒がしい所ではあるが、一つ曲がれば住宅街へと繋がる道になる。さっき見たネオン街はすっかり消えてしまう。 「とりあえず、スーパーでいいんだよな?」  今まで静かだった車内が、望の一言で会話が始まる。 「あ、ああ、構へんで……」  いきなり話しかけられ、雄介は焦ったのかもしれない。明らかに慌てて答えたのだから。 「何、慌ててんだよ」 「あ、いや、別に……いきなり望に声掛けられたから焦っただけだって……。ちょっとボーッと周り見とったしな。せやから、反応も遅くなってもうたって所かな?」 「そういや、今のお前って静かだよな。いつもなら、うるさいくらいに話してくるのに……」 「あ、いやぁ、望が運転してくれることが珍しい事やったからなぁ。ほら、運転中に話し掛けられるの苦手な人とかっておるやんかぁ。せやから、望は大丈夫なんかな? って思うてな」 「俺はそういうの全然大丈夫だけどな。ただ、お前が運転中に手を出して来なければだけど……」 「あんなぁ、流石に運転中の奴を襲うなんてこと考えたことなんかあらへんで……」 「あ、そっか……俺の考え過ぎだっただけか」 「ま、まぁ、和也やったら、あるかもしれへんけど、俺は流石に運転中にはそないなことはせぇへんで……」  だが雄介は、二人だけのこの空間で望の体を抱きしめようとしたが、さっき望が言っていたことを思い出し、普通に座ることにしたようだ。 「今、抱きつこうとしただろうがぁ。だから、お前が居る時に運転はしたくなかったんだよ。助手席に座るってことは、運転してない訳なんだから、手が空いてる訳だしな」

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