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ー決心ー78

 確かに、望の言う通りである。  車の中とは二人だけの空間だ。それに車の中では、あまり周りの目を気にしなくてもいい。相手が恋人なら、手を出したくなるものだ。  雄介も、望から声を掛けられるまでは外を眺めていられたのだが、望に声を掛けられた途端、望の言葉通りに行動してしまいそうになっていた。 「せやけど、デートって言ってもやなぁ? 人の中やと望とは手繋げない訳やし、やっと二人だけの空間になれて、くっつきたくなるやんかぁ。だって、今までのデートはデートであってデートじゃないみたいやったしなぁ」  雄介にしては珍しく愚痴を零すのだ。  そんな雄介に望は溜め息を吐くと、 「悪かったな。どうせ、俺はお前みたいに肝は座ってねぇよ。それに、外では世間体ってのがあるだろ。俺だって、出来るなら外でだってお前と手とか繋いでいてぇよ」  今日の望というのは、いつも以上に素直な感じがするのは気のせいだろうか。  もしかしたら、望も今日のデートで何かを感じたのかもしれない。雄介のように珍しく愚痴を漏らす望。いつもの望なら、絶対にこんなことは言わないのだから。  いや、最近の望は少しずつ変わって来ている。そろそろ、雄介もそんな望に慣れてきてほしいものだ。 「ま、確かに望の言う通りやな。日本では、同性同士のカップルってあんまり認められてないしな。ほな、今度からデートってのは止めにしようか?」 「あ、いや、別にデートはいいんだけどさ」 「あ、スマン! そういう意味やなくて、『デート』って言葉にしないで『出掛ける』にせぇへんか? って意味や。そしたら、気が楽なんかな? って思ったんやけど。『デート』やと変に意識してしまうやろ? せやったら、『出掛ける』とか『遊びに行く』とかの表現の方がええかなぁ? って思ったんやって……」 「確かに、そうだな……雄介の言う通り、その方が気楽かもしれねぇな」  望は笑顔になると、スーパーの駐車場へと車を止めるのだ。 「さて、今日は雄介に何作ってもらおうかなぁ?」  明るく言う望。望なりに話を変えてくれたのだろう。雄介も望の言葉に乗り、 「せやなぁ、何がええ?」 「俺は何でもいいよ……お前が作る飯は美味いからな」

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