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ー決心ー97

 雄介の言う通り、今はまだ雨の量がそうでもないのだが、このまま降り続ければ、車内には水の抜け道がないため、水が溜まっていってしまうだろう。  水の逃げ道を作りたいところだが、電車は鉄でできているため、人間の手で穴を開けることは不可能だ。 「救助が先か……水が車内に溜まるのが先かっちゅう所やな?」 「つーか、何でそんなに落ち着いていられるんだよ」 「俺はみんなを信じているからや。かつては一緒に働いていた奴等やで、せやから、俺は奴等が早くこの車両まで助けに来てくれることを信じとる」 「そっか……」  和也は雄介に向かい微笑むと、助けが来るまでの間、椅子へ腰を下ろす。  だが、徐々に水が車内に溜まってきていた。先程まで水かさは靴底までだったが、今は足首まで上がってきている。  空は今まで闇が広がっていたが、段々と夜が明けてきているのか、ゆっくりと明るくなり始めている。  衝突事故が起きてから、まもなく十二時間が経とうとしていた。  この事故は駅と駅の間で起きた。電車は全部で十六両あり、雄介たちが乗っている車両は一番後ろの車両だ。そのため救助が後回しにされているのだろう。  衝突した車両も十六両あり、合計三十二両に多くの人が乗っていた。そのため、救助に十二時間もかかっているのだろう。  レスキュー隊というのは、消防士の中でも選ばれた人しかなれない部隊で、各区市に一部隊しかいない。  きっと今は近場のレスキュー隊にも応援要請が出ているのかもしれないが、それでも救助が追いつかない状態なのだろう。  夜が明ければ、この事故のために近隣の県からもレスキュー隊が到着し、救助にあたるのかもしれない。ただ、この雨の中では救助が難航する可能性もある。  それにしても、雄介たちが乗っている車両には、まったく救助が来る気配がないようだ。

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