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ー平和ー15
「そういうことだ。お前がちゃんと望の恋人なら、もし望に変な奴がつきまとった時には、堂々と『望の恋人だから、望には手を出すな』って言えんだろ?」
「せやな……」
雄介はやっと何かを吹っ切ったようだった。スッキリした表情を浮かべながら立ち上がる。
「雄介……それに、周りと合わせる必要なんてねぇよ。ゆっくりじっくり、自分のペースで、確実に勉強したことを頭に入れた方がいい。慌てたっていいことなんてないからな。大丈夫、お前のそばには医者としての大先輩がいるだろ? もしも困った時は望に聞いてみろよ。望だって、忙しくても相手にしてくれると思うぜ。むしろ、望的にはこう思ってるかもな。『会話が無いより、いろいろと聞いてくれた方がいい』ってさ。望は真面目な奴だから、勉強のことなら自分のことよりも雄介を優先して教えてくれると思う。それなのに、お互い会話を交わさなかったから、すれ違っちまったんだろうな」
「和也の言う通りやんな。望に前に勉強のこと聞いたら、丁寧に教えてくれたのを今思い出したわぁ。ホンマ、今日はありがとうな。今まで勉強ばっかりで、望の存在を忘れとったけど……久しぶりに恋人気分を味わいたくなってきたわぁ。せやから今日は勉強せんと、望とイチャつくつもりでおるで……」
「イチャつくのはいいけど……」
和也がそこまで言ったところで、今度は裕実が口を開く。
「望さん……大丈夫ですかね? きっと今頃、雄介さんがあんなことを言うから、傷ついているかもしれませんよ」
「確かにそうかもな。ああなっちまった望の機嫌を直すのって大変かもしれねぇなぁ」
和也が半分冗談交じりに脅すように言うと、雄介はため息をつきながら苦笑いを浮かべた。
「確かに、和也の言う通りやな。ああなってもうた望の機嫌を直すのはホンマに大変なんやわぁ」
「今日はお前が悪いんだろ? 弱気になるわぁ、別れるって言うわぁ、挙句の果てには逃げるように座り込むわぁ……だったしよ」
「ま、まぁ……そうなんやけどな。ホンマ、俺は何を言っとったんやろな? ずっと望の傍におるって決めておったのに、別れるとか言うて……」
雄介は頭を抱えるようにしてため息を吐き、やがて顔を上げた。
「けどな、それももう終わりや。今日はちゃんと望の機嫌を直して、俺がどれだけ望を大事に思っとるか伝えたいんや」
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